ダウンから立ち上がろうとしたが、途中でまた座り込んだ。ふらつきながら立ち上がるが、ロープに手をかけてレフェリーに背を向けたまま。ダメだ、ついに来たと思った。
2299日。6年以上君臨してきた日本の最強王者内山が負けた。王座奪取後、国内には19人の王者が誕生し、在位の長さ、強さを示す。日本記録の13度防衛へあと2つ。今年最大のニュースになるのは間違いない。敗因はいろいろと考えられる。
一番には相手のコラレスはめっぽう強く、内山にはやりづらい相手だったことだ。22戦目で24歳の若手だが暫定王者で同級1位は伊達でなかった。右はノーガードで目と柔軟な上体を使ってパンチをかわす。攻撃もアッパーで入ったり、大振りもスピードがあり、時にスイッチした。多くの元世界王者が「1回でもしかしてと思った」そうだ。
ニックネームは「インビシブレ(見えない)」。内山は「距離がとりづらく、思ったより速く、左が見えづらかった」と話した。変則スタイルに惑わされ、手数も少なかった。13度目の世界戦。初回にポイントを奪われたのは過去は2試合あるが、ジャッジが1人ずつ。3人とも9-10は初めてだった。
コラレスは前日計量で400グラムをサウナで絞り出し、再計量でクリアした。日本人は計量に神経質で相手の気の緩さと考えがちだが、海外には平気な顔して再計量も多い。当日は10キロ増やしてあのスピード。スタミナなどから早めに勝負にくるのは予想できた。
内山は「作戦失敗したかな」とも話した。2回は本来のジャブからではなく、取り返そうと出た。そこで左カウンターをアゴにもらった。ダウン後も「入れ返そうとした」と言い、さらに2度ダウン。ゴングまであと1秒も3ノックダウンルールでKOとなった。
あそこは必死にクリンチしたかった。世界戦のダウンは三浦、金子に2度だけ。通算でも3度。強さ故だがダウン後の対応が惜しまれる。1度クリンチもレフェリーの指示にすぐに体を離した。以前のアマは3度クリンチで警告となり、採点への影響が大きかった。アマの長い内山らしい、きれいさが仇になったか。
内山は海外進出の願いがかなわず、試合発表時は気力低下を口にした。強豪から若手相手になり、周囲は楽勝ムードに。次のV13へと気持ちも飛んでいた気がする。試合前のイベントでも妙な陣営の明るさがあり、緊張感に乏しかった。
王座奪取時はチーム内山としてジム全体でサポートした。最近はミーティングも立ち話になっていた。渡辺会長は4月に東日本協会長となり、ジムを空ける日も多かった。V11で王者も3人になり、マンネリ化し、慢心していたと言わざるを得ない。そう言えば、恒例だった会長のKOラウンド予想もなかった。【河合香】

