ケガにも負けず、逆境にも負けず、前に進み続ける。女子プロレス団体スターダムで「グラビアレスラー」として活躍する白川未奈(33)は、16日の後楽園大会でのアーティスト・オブ・スターダム選手権試合で、10月の移籍後初のタイトルを獲得した。ウナギ・サヤカ、中野たむと組み、鹿島沙希、ビー・プレストリー、刀羅ナツコ組に勝利。試合後はリング上で人目もはばからずに号泣した。序盤に相手3人から集中攻撃を浴び「顎がはずれた」というほどの痛みに耐え抜いた。「ブサイクになっても、整形するよりもベルトが欲しい」と喜びを爆発させた。
災難は続いた。33歳の誕生日となった26日の後楽園大会では、試合に敗れ、鼻を骨折し、全治2カ月というアクシデント。それでも自身のツイッターで「パワーアップして帰ってきます。鼻は折れても心は折れないのが白川未奈です!」とファンに向けてメッセージを送った。
グラビアアイドルとして活動する中でプロレスに出会った。もともと「世界に知れ渡る人になりたい」という夢があり、18年に30歳でプロレスデビュー。その後、米国での活動を視野に入れていた時にコロナに直面した。
白川 1人で米国の団体に行こうと。いろいろ回っていけば、いずれ大きな団体につながっていくのではと思って、計画していた。
夢はいったんお預けとなったが、強くなって知名度を上げるため「ファンが一番見ているスターダムに行きたい」と門をたたいた。同団体でグラビアとの“二刀流”で活動していた愛川ゆず季にあこがれていたことも背中を押した。
移籍して2カ月。慣れない環境に苦しみ続ける。「一からのスタート。求められていることも違ったし、気楽に過ごした日々はない」。プロレスに集中するため、グラビアの仕事をセーブ。ようやく自分の立ち位置が確立されてきた。
女性で30代というだけで「いつまでやるの?」と聞かれることも多く「男子なら年齢のことを言われないのに何で?」と悩む時期もあった。「結婚とか、子どもとか、自分でタイミングを決めたい。若い子ではなく、自分がそういう姿を見せていきたい」と強くなることで周囲を納得させるつもりだ。
両親や家庭のことを考え、大学卒業後は会社に就職。それでも「後悔する人生は送りたくないし、親のせいにもしたくない」。一代で会社を立ち上げた父の背中を追い掛け、自分の気持ちに正直に歩んできた。そんな両親はまだ自分の生き方を理解してくれていないが、認められるまで意志を貫いていく。
白川 最初は反対していたけど、最近はいろいろ見てくれている。海外に行きたいとか、日本で頑張るとかも伝えた。大きな会場でメインをやる時が来たら、親に見せたいなと。それまでは会場に呼ぶ気はない。
プロレスが軌道に乗ってきた。筋肉が付き、体つきも変わった。
白川 外国のレスラーに負けないような体になろうと。こういう体が好きなファンもいる。以前は万人受けを考えていた。今は自分をいいと思ってくれる人だけが付いてきてくれたら。
来年はタレント活動も増やし、バラエティー出演も視野に入れる。「私、NGないんですよ。女子プロレスを広めたいし、そのためにはベルトが必要。シングルのタイトルにも挑戦したい」。自分の夢に真っすぐ進み、プロレス界の頂点に立って、自信を持って両親に伝える。【松熊洋介】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)
◆白川未奈(しらかわ・みな)1987年(昭62)12月26日、東京都生まれ。青学大卒業後、芸能界入り。Hカップの巨乳アイドルとして多方面で活躍。15年には、在京スポーツ新聞社6社を応援するユニット「スクープ!?」にも所属。18年8月に「ベストボディ・ジャパンプロレス旗揚げ戦」でプロレスデビュー。同11月初勝利。今年10月横浜武道館大会でスターダムデビューした。156センチ。