07年5月の引退から10年目。副理事として巡業部副部長に就いた玉ノ井親方(39=元大関栃東)は久しぶりの春巡業で驚きに触れた。「お客さんの層が自分の現役のときと違う。女性を含めて若い人たちが多かった。新鮮な感じでしたね」。
自分の目で見て、分かることが多かった。「横綱、大関は土俵に上がらずとも1時間、みっちり汗をかいていた。地道な基本をやっている。強さの秘訣(ひけつ)が分かりました」。
現役時、巡業は学舎(まなびや)だった。幾人も土俵に立ち、10番取れれば多い。横綱曙には「お前はいい」と稽古を断られたことも。そのとき、横綱若乃花に言われた。「やりづらいから嫌なんだ。プラスに思った方がいいぞ」。自信となって、本場所で曙から4勝(9敗)した。
当時は当たり前のように行われた横綱、大関同士の稽古。若貴兄弟と曙、武蔵丸、貴ノ浪…。見逃すまいと座って凝視した。「すごかった」。特に自身と同じ小さな体で横綱に上り詰めた若乃花を模範とし、おっつけの技術を盗もうと一緒について回ったこともあった。巡業だから、できることがある。「力士がより良くできる形をつくっていきたい」。今は親方として、そう思う。【今村健人】
◆玉ノ井太祐(たまのい・だいすけ)元大関栃東。本名・志賀太祐。1976年(昭51)11月9日、東京都足立区生まれ。父は元関脇栃東。94年九州初土俵。02年初に3組目の親子V、史上7人目の新大関V、同2人目の各段制覇を達成。優勝3回。07年夏前に引退し、09年9月に父の定年に伴って「玉ノ井」を継承。


