名古屋場所で着物に髪をばっちりセットし、西の花道近くの客席で15日間観戦する女性は大相撲ファンにおなじみだ。磯部安江さん(78)は、箱根駅伝で活躍した青学大の神野大地(セルソース)の祖母としても有名。7月場所が東京開催となったが「協会の判断が正解! 今は辛抱と我慢ね」と歯切れよく話した。

磯部さんは名古屋市内の鶏肉卸店の4代目おかみで「白鷺の姉御」が愛称。初めて大相撲を観戦したのは、20年ほど前になる。知人からチケットを譲り受けたのがきっかけだった。相撲の知識は皆無だったが、いざマス席から観戦すると、当時大関だった千代大海(現九重親方)の地割れのようにひび割れした足裏を見て「頭が下がる思いになったわ」。当時幕内だった若の里(現西岩親方)の美しい所作などにもほれ込み、大相撲特有の神秘的な雰囲気にのめり込んだ。

最初の5年は定着している西ではなく、東の花道近くで観戦していた。西の花道に変えたのは、行司や呼び出し、贈呈物が真横を通り過ぎ、より大相撲を身近に感じることができるから。「優勝杯が通り過ぎると興奮します。今の席はすごくいいわ」。コアな楽しみを持つ姉御は、来年の名古屋開催を待ち望んでいる。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

15年7月、大相撲名古屋場所8日目を観戦する陸上・神野大地の祖母磯部安江さん(右から3人目)。同2人目は青学大陸上部の原晋監督
15年7月、大相撲名古屋場所8日目を観戦する陸上・神野大地の祖母磯部安江さん(右から3人目)。同2人目は青学大陸上部の原晋監督