西前頭11枚目のベテラン旭天鵬(40=友綱)が、ようやく目覚めた。豪快なすくい投げで豊響(30)の全勝を止めて、5日目で初日を出した。十両に陥落すれば引退と公言しているが、まだまだ引き下がらない。

 ようやく“らしさ”が戻った。のど輪で上体をのけぞらされても何のその。左が入ると、旭天鵬はその腕に力を込めた。豪快なすくい投げで豊響を裏返しに。「やっとだぜ。あ~良かった、良かった」。満面の笑みで、初日を喜んだ。

 十両に落ちたら引退を公言する中で、嫌な空気が漂い始めていた。夏場所前に尿路結石が見つかり、以来水分を多めに取ってきた。その分、食事量が減り、体重は5キロ減の150キロに。場所前には左膝の水を2度抜いた。ただ「強いて言えば、それくらい。体重も軽くなっていいんだ」。序盤の4連敗は想定外だった。

 前夜、心配する電話が8件きた。「どこか悪いの?」「どうしたの?」。モンゴルからもあった。「まだ4日じゃん、と思うけど、周りはそう思うか」。験直しに宣言通り、ウイスキー「バランタイン17年」をロックで1本半空けた。普段より半分多い。「結構いいお酒。おいしかったよ」。

 朝には台風の中、まわし一丁で散歩して雨にぬれた。そして一言。「すべて雨に流したよ」。取組前には、92年春場所初土俵の同期で39歳の十両若の里が先に初日を出した。前日に2人「同時引退もありだな」と冗談を交え、奮起を誓った仲。「向こうも(幕下に)落ちたらやらないだろうし、お互い思いは一緒」。通じ合う絆で負の空気を洗い流した。

 白鵬に並ばれた通算勝利を簡単には抜かせず「やっぱり勝つってうれしいな」。秋場所初日に41歳を迎えるレジェンドは、まだ燃え尽きない。【今村健人】