大関照ノ富士(23=伊勢ケ浜)に、悪夢が降り掛かった。今場所2人目の大関対決で稀勢の里(29)に寄り倒しで敗れた際に、右膝を負傷した。痛みをこらえながら引き揚げ、都内の病院で検査を受けた。2度目の優勝どころか、初めての休場となる可能性まで浮上した。

 電気が走るような痛みが照ノ富士を襲った。稀勢の里の寄りに耐え、俵に右足をかけて踏ん張る。その瞬間、右膝が内側に入った。苦悶(くもん)の表情を浮かべ、崩れるようにあおむけに倒れて2連敗。大銀杏(おおいちょう)に砂をつけ、痛みをこらえながらゆっくりと引き揚げる。車いすは使わなかったが、右手を付け人の肩に乗せ、かばうように足を引きずった。膝の状態を問われると「(音が)ありましたね」。段差や階段は左足から、1歩ずつ慎重に歩いた。相撲診療所でエックス線検査後、都内で治療した。

 前日12日目に初黒星。その影響は、想像以上に大きかった。夏場所の初優勝は初日黒星からの逆転V。初めて追われる立場になり、神経をすり減らした。朝稽古後は「(これまでの)毎場所より疲れは来てるね。気持ち的なものもある。(優勝争いの)上にいると、こんな疲れるんだな」と、心境を吐露した。連勝中は、気持ちが乗って体の疲労を感じないもの。勝負の終盤戦で1敗して、張り詰めていた糸が切れてしまったのかもしれない。

 今場所は白鵬が途中休場し、優勝の本命に挙げられていた。両かかとや右肘に慢性的な痛みを抱えていても弱音は吐かない男は、残り2日の戦いについて「普通。気持ちは変わらない」。その後は無言を貫いた。相撲診療所の臼田修二所長によると「骨には問題ない。精密検査の結果次第」という。だが靱帯(じんたい)損傷の可能性があり、最悪の場合、11年技量審査場所の初土俵以来、初の休場もあり得る。2度目の賜杯へ独走態勢から一転、窮地に立たされた。【桑原亮】