横綱白鵬(33=宮城野)が平成最後の天覧相撲を白星で飾った。東前頭5枚目碧山の巨体を下手出し投げで転がした。横綱でとった天覧相撲は6戦全勝。10年8月に、史上初の3場所連続全勝優勝をたたえる「おねぎらいとお祝い」の言葉を下さった天皇陛下の前で、横綱として43度目の全勝ターン。平成最後の東京場所優勝へ、単独トップを守った。魁聖、千代の国、矢後の平幕3人が1敗で追っている。

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巨漢碧山の突き押しをしのぎ、右四つになるや白鵬が攻めた。右下手でまわしを引いた。鋭く腰を切った。一瞬の下手出し投げに館内が沸く。貴賓席の両陛下も笑顔で拍手した。横綱になって、天覧相撲は6戦全勝。平成最後の“大一番”を鮮やかに締めたのは、白鵬なりの恩返しだった。

支度部屋でしみじみこぼした。「花道でちょっと(貴賓席を)見上げました。さびしいっていうか…。9年前にいただいた手紙を思い出します。平成に育ててもらいましたからね」。

史上初の3場所連続全勝優勝を飾った10年7月25日、名古屋場所千秋楽。角界を揺るがせた賭博問題で、日本相撲協会が天皇賜杯を辞退。受け取る賜杯がなく、悲しくて泣いた。その9日後に届いたメッセージ。「おねぎらいとお祝い」という陛下の言葉が入った宮内庁の書簡に、感激した。「あの手紙があるからこそ、頑張ろうという気持ちになれた。振り返ってみれば、間違いない。あの時は賜杯がなかったからね。本当にうれしかった」。書簡原本は協会が保管しているが、たった1通のコピーは白鵬の自宅にある。

単独トップを守った。全勝ターンは昨年秋場所以来45場所目、横綱では43場所目だ。「出来すぎという気持ちがある。いろんな取組があったしね。頭になかった」。序盤は紙一重の内容が続いた。しかし、6日目からの3番で確実に内容が上がっている。初日、8日目の多い天覧相撲だが「中日で良かったね、今回は」。後半戦へ。大きな弾みがついた。【加藤裕一】