“親子3代”関取の誕生だ。日本相撲協会は29日、東京・両国国技館で名古屋場所(7月7日初日、ドルフィンズアリーナ)の番付編成会議を開き、琴鎌谷改め琴ノ若(21=佐渡ケ嶽)の新十両昇進を決めた。

現佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)の長男で、史上10組目の親子関取。昇進にあたり父のしこ名を継承した。将来的には祖父で先代佐渡ケ嶽親方の元横綱「琴桜」襲名に意欲を見せた。新十両は他に一山本(25=二所ノ関)、木崎海(24=木瀬)、竜虎(20=尾上)、再十両に貴ノ富士(22=千賀ノ浦)が決まった。

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2代目琴ノ若は、恐縮しながらも堂々と飛躍を誓った。「全然顔じゃないけど、このしこ名に恥じぬよう精進していきたい」。この日、千葉・松戸市の部屋で行われた昇進会見。親子3代にわたる関取となり、「師匠と先代に追いつくためのスタートラインに立てた」と気持ちを新たにした。

周囲の言葉に救われた。十両昇進を懸けた夏場所では1番相撲から3連勝も、一転して3連敗。精神面が課題だった。「自分で考え込んでしまい気持ちに迷いが出た」。連敗中、大関経験者の琴奨菊に「弱い自分を見せるな」と一喝された。師匠、部屋の関取衆にも親身に声をかけられ「開き直れた」と、重圧に打ち勝ち7番相撲で勝ち越しを決めた。

現役時代に強烈なぶちかましで「猛牛」と呼ばれた祖父は、07年8月に66歳で死去。小学生のときは登校前に毎日稽古場に顔を出し、先代の厳しい指導を目の当たりにした。祖父が大関、横綱時代に名乗っていた「傑将(まさかつ)」から1字取って「傑太(まさひろ)」に変更。孫の誕生に万歳して歓喜する先代が印象に残っているという現師匠は「その字をもらえば先代も天国で喜んでくれる」と改名の意図を説明した。会見前には祖父の墓前に親子で昇進としこ名の変更を報告した。大関以上の昇進が前提だが「琴桜」襲名の可能性も示唆。仏壇に「次の目標に向かって頑張ります」と報告した21歳の見据える先には、最高位がある。【佐藤礼征】

◆琴ノ若傑太(ことのわか・まさひろ)本名・鎌谷将且。1997年(平9)11月29日、千葉県松戸市生まれ。元横綱琴桜の長女、真千子さんと現佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)の長男として生まれる。5歳から相撲を始める。埼玉栄高では主将として高校総体団体優勝。15年九州場所で初土俵。16年初場所で序ノ口優勝を果たし、所要4場所で幕下昇進。19年名古屋場所新十両。家族は両親。189センチ、160キロ。血液型はAB型。得意は押し、寄り。