155キロ担ぎだし炎鵬勝ち越し、休場白鵬に恩返し

  • 炎鵬(左)は阿炎の右足を狙い足取りで破る(撮影・小沢裕)

<大相撲初場所>◇13日目◇24日◇東京・両国国技館

西前頭5枚目の炎鵬(25=宮城野)が、小結阿炎を足取りで破って勝ち越しを決めた。現役関取最軽量の99キロで、身長も最も低い168センチながら、185センチ、155キロの相手を浮かした。これで1大関、2関脇、1小結撃破と、連日観客を沸かせている。兄弟子で休場中の横綱白鵬にも吉報を届ける白星となった。

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関取最小兵の躍進が止まらない。今日も大歓声に包まれながら、炎鵬は支度部屋へと引き揚げた。熱気高まる周囲をよそに、表情からは疲労の色が。連日欠かせない、付け人による首付近へのアイシングを受けながら「ここまでこれたのは少し成長できたのかな」と、今場所ようやく安堵(あんど)の言葉を漏らした。

自身より17センチも身長が高く、手足が長い阿炎に、立ち合いから突き押しで攻められた。思わず引くと、絶体絶命の土俵際。阿炎の右の突き押しを、寸前で屈んでかわした。広げた両腕で抱え込んだのは、相手の右膝。力を入れると155キロの巨体が宙に浮いた。そのまま担ぎ上げるようにして、最後は土俵外に丁寧にそっと置いた。「見えていない。感覚だけ。気が付いてたら足を取っていた」と無心でつかんだ白星だった。

兄弟子に届ける白星にもなった。17年春に角界入り後、横綱白鵬からさまざまな技を教わった。この日のように相手の足を取る相撲は、部屋恒例の滋賀・長浜合宿に初めて参加した時に熱心に指導を受けたものだった。日頃から胸を借り、幕内上位にまで番付を上げた今場所。三役を次々と破って勝ち越しを決め「とりあえず1ついい報告ができると思います」と、休場中の横綱に恩返しができた。

残り2日も、しっかりと締める。新入幕だった昨年夏場所以降、後半戦の11日目以降での取りこぼしが目立った。しかし今場所は、3連勝中。「まさかここまで相撲が取れるとは思わなかった。1日1日、チャレンジャーの気持ちでやってきた」と、勝ち越したことに自分自身も驚いている。自身初となる2桁白星に向けて「2日間勝つつもりで集中してやりたい」。人気も実力もうなぎ上りの小兵が、さらなる高みへ挑む。【佐々木隆史】

◆炎鵬晃(えんほう・あきら)本名・中村友哉。1994年(平6)10月18日、金沢市生まれ。兄文哉さんの影響で5歳から相撲を始める。金沢学院東高で3年時に高校総体8強。金沢学院大では2、3年時に世界選手権軽量級で優勝。初土俵は17年春場所。横綱白鵬に憧れ、白鵬の内弟子として入門。白鵬から「ひねり王子」の愛称をつけられる。序ノ口、序二段、三段目と3場所連続で各段優勝を果たし、18年春場所新十両、19年夏場所新入幕。家族は両親、兄。168センチ、99キロ。血液型AB。得意は左四つ、下手投げ。通算120勝77敗。

<炎鵬13日目までの結果>

初日○(下手投げ、46秒8)宝富士 2本差して上から抱え込まれるも耐えて豪快な投げ

2日目●(上手投げ、8秒9)正代 右上手を取られてほどこうとするが押しつぶされる

3日目○(下手出し投げ、16秒3)明生 弾かれながらも右下手を取ってタイミングよく引く

4日目●(つり出し、15秒9)栃ノ心 豪快に持ち上げられて両足ジタバタもなすすべなし

5日目○(引き落とし、8秒6)松鳳山 頭を押さえようとする手を払い相手が足を滑らせる

6日目●(寄り倒し、6秒8)阿武咲 左でおっつけるも左上手を許すと一気に土俵の外へ

7日目●(寄り倒し、6秒4)隠岐の海 距離を取って左右に動くも抱え込まれてつぶされる

8日目○(押し出し、25秒0)遠藤 徹底して距離を取りながら右に左に動いて隙をつく

9日目○(押し出し、2秒3)豪栄道 立ち合い猛突進の相手をかわし土俵際で懸命の押し

10日目●(押し出し、7秒5)貴景勝 動きを冷静に見極められて巨体の体当たりに屈する

11日目○(押し出し、3秒2)朝乃山 左に動きながら右腕を取り体勢崩した相手を一押し

12日目○(下手投げ、48秒3)高安 馬力のある元大関に右上手を許すも執念の下手投げ

13日目○(足取り、3秒2)阿炎 一瞬の隙をついて右足を取り担ぎ上げて土俵の外へ