幕内の番付で最下位に位置する西前頭17枚目の徳勝龍(33=木瀬)が、初優勝を果たした。取組前に、1差の2敗で追っていた西前頭4枚目の正代が、同2枚目の御嶽海に勝利。徳勝龍が結びの大関貴景勝戦で敗れれば優勝決定戦にもつれる状況になったが、寄り切りで貴景勝を破り、自らの白星で優勝を勝ち取った。勝利した直後には土俵上で涙があふれた。

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14日目にしても千秋楽にしても、どう転んだって地力は正代や貴景勝の方が上だ。近大の先輩だからではなく、その下馬評を覆した徳勝龍の優勝は大したもんだとしか言いようがない。正代の一番に関係なく、大関戦に全神経と気合を込めて臨んだのだろう。それがあの涙に表れていた。内容的には押し相撲の大関相手に、自分の左四つに組み止めたのが全てだ。警戒した貴景勝の足を止めたのは、5日連続の突き落とし。この2つの型と勢いで優勝を勝ち取った。亡くなった北の湖さんに押し相撲でなく左四つを磨け、と指導されたと聞く。つくづく横綱の眼力はすごいと感じる。

世代交代が進む中、ベテランの域に入った33歳の優勝にも意味がある。コツコツと頑張っていれば何かいいことが起きる。序盤に1つぐらい負けても、あきらめなければ何かが生まれる-。下位の力士にそんな気持ちが芽生えれば、突き上げが起こり相撲界の活性化につながる。意義ある優勝になった。(高砂浦五郎=元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)