先場所幕尻優勝の西前頭2枚目徳勝龍(33=木瀬)が、初金星で初日を出した。横綱鶴竜を得意の左四つから寄り切った。

33歳6カ月での初金星は、年6場所制となった58年(昭33)以降に初土俵では3番目の年長記録。先場所の下克上優勝で注目を集めた今場所、初日から5連敗と苦しんだが、金星で上昇のきっかけをつかむ。注目の全勝対決は御嶽海が大関とりの関脇朝乃山を下した。

   ◇   ◇   ◇

大きく息を吐き出した。徳勝龍が得意の左差しから横綱鶴竜を寄り切り。3番目の年長初金星だが、それよりも真っ黒な連敗街道から抜け出した安堵(あんど)感が広がった。「もう必死です。金星はうれしいですけど、今場所の初白星なんで。長かったなと」。心からの本音だった。

先場所は史上2度目の幕尻優勝。「史上最大の下克上」と称され一躍、時の人となった。迎えた今場所は自己最高位。「(対戦相手は)三役力士。そう簡単には勝てない。上位は甘くない」と壁に打ちのめされてきた。それでも「落ち込むことなく、やれることをやろう」と鼓舞してきた。

優勝した初場所後は、経験したことがないほどの多忙を極めた。春場所の番付会見で「あっという間の1カ月」と表現した。地元の奈良では、約1万人が集まった凱旋(がいせん)パレードもあった。その中で浮かれることなく、勝負に備えた。通常の稽古に加え、ジムでのトレーニングが日課。新型コロナウイルス感染拡大の影響による世間の「ジム離れ」もプラスにした。感染予防に最大限の配慮をした上で「(利用者が)少ないからね。(トレーニングは)やりたい放題」とルーティンを守った。

もやもやが晴れた。大ファンのプロ野球・阪神を退団して去就が定まらなかった鳥谷がロッテ入り。「タテジマはタテジマですよね。違和感ない。背番号00もかっこいい」。38歳で新天地に挑む鳥谷を励みに徳勝龍も逆襲をあきらめない。【実藤健一】