大相撲秋場所前に新型コロナウイルスに集団感染した玉ノ井部屋の玉ノ井親方(元大関栃東)が30日、感染後初めて報道陣の電話取材に応じた。当時の状況について「何も言葉が出てこない感じだった」などと振り返った。

秋場所前の9月5日に、幕下以下の弟子1人の感染が判明。保健所の指導のもと、すぐさま他の力士らもPCR検査を受検すると、さらに18人の力士の感染が判明した。

協会作成のガイドラインのもと、マスク着用や手洗いうがいの徹底、不要不急の外出を控えるなど感染予防は万全なはずだった。だからこそ「びっくりどころの話じゃない『えっ』って」と、まさかの事態に言葉が出てこなかったという。

玉ノ井親方も直接、弟子に対して肌を合わせながら指導していたといい「密着しながらいろいろとやっていたので、自分もうつっていると思ったけど幸いなことにうつってなかった」と話した。

秋場所前には19人の弟子の感染が判明したが、秋場所中の再検査ではさらに5人の感染が判明し、合計で28人中24人の弟子が入院した。

ただ重症者はおらず、弟子が入院する際には「治ったらすぐに戻ってこられるから早く治してきなさい」と1人1人に声を掛けたという。「本人たちの顔色を見ていても『行ってきます』と言ってくれたので。そういうのを見て気分的には早くよくなって帰ってきてくれることを祈っていた。そういうことばかりを考えていた」と毎日祈る思いだった。

また、入院している弟子らと毎日連絡を取るなどして気に掛けていたという。入院期間も長い弟子で2週間、早くて1週間ほどで部屋に戻ってくる弟子もいた。秋場所14日目の9月26日には、入院した全員が部屋に戻ってきたといい「子どもたちを預かっている責任者ですから。きちんと対応していかないといけないと思った」と責任感を口にした。

11月場所(8日初日、東京・両国国技館)に向けて、相撲を取る稽古を10月中旬頃から再開したという。それまでは落ちた体力や筋力を取り戻すために、筋力トレーニングなどに励んでいたという。「急に体力が戻る訳ではない。少しずつ体調を戻しながら。少しずつ本来の形に戻ってこられたというのはありがたい」と当たり前だった日常に戻りつつあることに感謝した。

秋場所を全休となった弟子らの番付は、秋場所後に行われた番付編成会議で据え置きの措置が取られた。「協会の親方衆もそうですけど、理事長もはじめ執行部の皆様方の考えでこういう風にして頂いたのは本当に感謝しきれないくらい有り難い話」と感謝。だからこそ「本人(弟子)たちも土俵に上がれる喜びと感謝もそうですけど、とにかく土俵で先場所できなかったことをおもいきりやってくれればと思う」と弟子の奮闘に期待した。