日本相撲協会は30日、東京都内で臨時の理事会を開き、20日に大麻使用が判明したことを発表し謹慎中の十両貴源治(24=常盤山、本名・上山賢)を懲戒解雇処分に、師匠の常盤山親方(元小結隆三杉)を委員から年寄への降格処分にすることを決定。同日、本人に言い渡した。17日に大相撲名古屋場所が開催されていた愛知県内で大麻たばこを吸引し使用。19日の薬物検査(尿検査)で陽性の反応が出ていた。

日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)から、処分意見の答申を委嘱されたコンプライアンス委員会が事実関係を調査。大麻取締法で使用は刑罰の対象になっていないが、同協会の薬物使用禁止規定では、使用自体を禁止されている。この規定に違反した場合は原則、解雇処分とすることが定められている。さらに貴源治は19年9月の理事会で、部屋の弟弟子らに対する理不尽な腕立て伏せの強要や侮辱的な言動があり、けん責の懲戒処分を受けている。また今回の件でも、協会の事情聴取に当初、大麻使用の事実はないという、虚偽の返事をしていたことも「事実を否認した態度も許し難い」と断じた。同委員会のヒアリングでは過去に8回程度、大麻使用の事実があったと供述し「相応に反省、悔悟している様子はうかがえる」としたものの「かかる事情をもって処分を軽減するほどの特別の事情と評価することはできない」とした。

過去に同協会では08年以降、大麻使用及び所持により力士4人を懲戒解雇しており、処分を軽減した例はない。このことから貴源治についても、処分軽減の特別な事情は認めず、薬物使用禁止規定に定める原則に従い、懲戒解雇処分とするのが相当、と八角理事長に答申した。

また師匠の常盤山親方については、18年12月の理事会で、弟子の暴力事案でけん責処分を受け、19年にあった前述の貴源治の事案についても報酬減額の処分を受けていた。貴源治の生活指導で監督責任があり、今回の貴源治の大麻使用の噂が他の部屋からの情報提供もあったことから「指導監督が不十分であったというほかない」とした。19年の処分後も「貴源治が自力で更生すると軽信して、同人に何ら特別な指導監督を行わないまま、結果的に、貴源治が大麻の使用を繰り返していることに全く気づいていなかったのであるから、その指導監督の態度に重大な不足があったことは明らか」と断じ、委員から年寄への2階級降格の懲戒処分とするのが相当、と答申した。

これを受けてこの日、理事会を開催。コンプライアンス委員会の答申通りの処分を決定し、それぞれ本人に通知した。同協会は全協会に対し、あらためて薬物使用の禁止を厳しく通知。今後の対策として、全協会員への薬物研修及び薬物検査の実施を検討するとした。