大相撲の伊勢ケ浜親方(61=元横綱旭富士)が3日、東京・両国国技館で還暦土俵入りを行った。

昨年7月6日に60歳の誕生日を迎えた同親方は、その1カ月前の5月30日に還暦土俵入りを行う予定だったが、コロナ禍で延期。予定より1年4カ月遅れで披露の場が設けられた。両国国技館での還暦土俵入りは15年5月の元横綱千代の富士(先代九重親方、故人)以来。その時は白鵬が太刀持ち、日馬富士が露払いと、現役横綱を従えてのものだった。

長寿祝いとして特別に行われる還暦の横綱土俵入りでは、太刀持ちに元横綱日馬富士、露払いに安治川親方(元関脇安美錦)を従え、現役時代の不知火型を披露した。不知火型では1937年の太刀山以来、実に84年ぶり。還暦土俵入りの象徴とも言える赤い綱は7月下旬に、弟子の照ノ富士(29)が新横綱に昇進した際に打たれた綱と同時に作られた。

無事に務め上げた伊勢ケ浜親方は「ここが1つの目標で、いつかはやるぞという感じでいたので、うれしく思います。この還暦土俵入りを区切りに、新たなスタートを切るという思いでやりました」と充実感を漂わせた。2分十数秒ほどの土俵入りを振り返り、現役時代と比べ「筋肉の量も違う。綱も化粧まわしも重い。なかなか思ったように体は動かない。足を上げようと思っても上がらない」と悪戦苦闘しながらも「まっ、キチンと出来たんじゃないでしょうか」と自己評価した。太刀持ち、露払いを弟子が務めたことには「ここまでやってきて良かったかなと思う」と師匠の顔をのぞかせた。

土俵入りが決まり、数年前からトレーニングも重ねてきた。土俵入りの稽古こそ、してこなかったというが「あまりにも、みすぼらしい体は見せられない。4年ぐらいかけて筋トレをしてきた。(コロナ禍で延期となり)1年、余分にトレーニングして、しんどかった。限界だったので、ちょうど良かったです。明日からは、しなくていいのかなと思いました」と、安堵(あんど)の表情を浮かべた。

不知火型の横綱土俵入りは、弟子の照ノ富士に、しっかりと受け継がれた。一人横綱になったが「責任を、しっかり全うして横綱らしい相撲を、これからまた取ってくれると思う。皆さんに期待していただきたい」と期待を寄せ、引退した元横綱白鵬の間垣親方には「引退は必ず誰しもあること。これからしっかり、また親方として後進の指導にあたってほしい」とエールを送った。65歳の協会定年まで4年を切っているが「最後まで親方として関取を1人、2人でも輩出して、協会のために頑張りたい」と話した。