大の里の父、中村知幸さんは館内で家族と優勝の瞬間を見届け、知人と抱き合って号泣した。「そりゃ涙出ますよ。やばいです」。
父子で夢に描いた光景をその目に焼き付けた。アマ相撲の選手だった父。「小さな時から一緒に相撲してきて、賜杯を抱いてくれることを夢見て、それが実りましたね。チームは力なりです。すごいやつですよ」とまた涙をぬぐった。
先場所も千秋楽まで優勝の可能性を残す中、新入幕の尊富士が優勝した。「悔しかったね。(優勝)パレードも見たくなかったけどちょっと見てしまったら悔しくてね」。それだけに今場所は力が入った。心配は2日目に高安に敗れた相撲。「足をひねったな」とラインすると「痛い」と返ってきた。「無理せず休場も」とのアドバイスには「するわけない」。力士としての決意を感じた。「腹を決めたなら痛い足でも地に足つけて頑張れ」と送った。
アマでの実績から大きな期待を背負った。そのつらさも父親は知る。「エリートと言われるけど彼は雑草ですよ」。父子の夢がひとつ、結実した。【実藤健一】

