月組トップ珠城(たまき)りょうが15日に兵庫・宝塚大劇場で開幕する「夢現無双」で宮本武蔵にふんする。吉川英治氏のベストセラー小説をもとに、二刀流「二天一流」をおこした剣豪役に臨む。ショー「クルンテープ」はタイを舞台にしたエキゾチックなレビュー。新トップ娘役・美園(みその)さくらとの新コンビ、本拠地お披露目となる。宝塚は4月15日まで。東京宝塚劇場は5月3日~6月9日。

トップ娘役として初めて迎える本拠地作。美園は「身の引き締まる思い。人から見られている意識はあります」。背中を見せる立場になった。芝居では、武蔵をひたすら思うヒロイン役。吉川英治氏の作品をもとにした漫画「バガボンド」を参考に役作りを進めた。

「ずーっと(武蔵を)追い掛けているので、今自分はどういう状況で、武蔵はどうなのか、つねに考えて追い掛けないといけない」

単調にならないよう留意。珠城に懸命についていく自身の境遇にも似ている。

「その気持ちは『使えるな』と思いました。(セリフは)自然と、私が珠城さんをお慕い申し上げている気持ちがリンクして…」

前トップ娘役、愛希(まなき)れいかの退団を受け、昨年11月、珠城の2代目相手役に就いた。自らを「数学体質」という。

「納得いくまで徹底したい。役作りも、自分の中で道理が通っていないとダメなんです。雰囲気だけではやりたくない。できない」

答えが明確な数学が子供のころから好きだった。

「ちゃんと筋道がないと、気持ち悪い。『なんで』と先生に質問攻め。ノートにびっしり、質問を書いて、自分が納得するまで聞くのは徹底していました」

数学では、解答は同じでも、数式や導き出し方が違えば、それも問い詰めた。

「舞台は答えがない。だからこそ苦しんでいる面はある。ひとつじゃない。突き詰めれば奥が深い。そこのおもしろさですよね」

台本にも、演出家に尋ねる疑問点を書き込む。

「(演出の)先生も困っていますね(笑い)。自問自答も続けています。だからこそ、お客様に『よかった』と言ってもらえると、本当にうれしいんです」

悩む美園の背を押したのが珠城だった。「宝塚で頑張ろうと思った要因には、珠城さんが大きく占めています」。13年に首席入団。3年目で新人公演ヒロインに抜てき。バウヒロインも経験したが、その裏で悩みを深めていた。

「珠城さんに恩返しがしたい。少しでもやりやすい環境を、組のみんなを見て、日々お稽古してらっしゃる珠城さんを、少しでもお手伝いできないかな、と」。こう言い、オペラグラスをのぞくしぐさをし、さらに続けた。「(助力への)隙間を探しています」。

◆グランステージ「夢現無双-吉川英治原作『宮本武蔵』より-」(脚本・演出=斎藤吉正) ベストセラー小説をもとに、二刀流「二天一流」の開祖、宮本武蔵の生き様を描く。作州宮本村の郷士・新免武蔵(珠城りょう)は、並外れた度胸で無類の強さを誇る。旅の僧侶・沢庵(光月るう)の教えを受け、宮本武蔵と名を改め、剣術修行に出る。悩み苦しむ武蔵と、幼なじみお通(美園さくら)との恋はすれ違い、武蔵は、民衆の話題をさらう天才剣士・佐々木小次郎(美弥るりか)と宿命の対決へ。

◆レビュー・エキゾチカ「クルンテープ 天使の都」(作・演出=藤井大介) 青い海と色鮮やかな花々。南の楽園を舞台にしたエキゾチックなレビュー。

☆美園さくら 6月17日、東京都江戸川区生まれ。13年3月入団。14年の阪急阪神初詣ポスターに起用。同2月、組まわりを経て月組配属。15年「1789」で新人公演初ヒロイン。16年「FALSTAFF」、17年「Arkadia」でバウ公演ヒロイン、昨年6月「雨に唄えば」では東京公演ヒロインも。同11月に珠城の2代目相手娘役に就いた。身長164センチ。愛称「さくら」「さくさく」。