当たり前のように受けた恩を、当たり前のように返せる人は少ないだろう。永瀬正敏(51)は、それをサラッとこなすかっこいい俳優だった。

 台湾人映画監督、ウェイ・ダーション氏がこのほど来日した。12月に日本での公開が決まった映画「52Hzのラヴソング」のPRイベントのためだ。

 永瀬は同監督がメガホンを取った「KANO 1931 海の向こうの甲子園」に主演したことから監督と親交があり、イベントのサプライズゲストになっていた。

 司会者に呼び込まれると、誕生日を迎えたばかりの監督のため、ケーキを手に登場した。これはイベント主催側が企画したもので、よくある演出だ。さらに永瀬は、今治タオルもプレゼントした。「KANO-」で愛媛県出身の野球監督、近藤兵太郎氏を演じたことから愛媛県観光大使に就任しており、同県の中村時広知事から頼まれたのだという。

 これだけでは終わらなかった。「まだあります」と、自らデザインしたという猫の形のキャンドルをプレゼント。関係者によると、「猫が好き」というのと、映画が動物に関する作品であることが理由らしい。

 感心していたら、まだまだあった。既に2つのプレゼントを抱えている監督の腕に、さらに2つ、包みを重ねた。その場では説明しなかったが、どうやら中身は、猫の形のメガネ置きと時計だとか。自ら選んだのであろう。もちろん、自腹だ。

 なぜここまでするのか。それは、台湾の芸能界における文化が関係しているとみられる。

 永瀬はいつも仕事で台湾に行くと、大量のプレゼントをもらうそうだ。台湾の芸能界には、そのような文化があるのかもしれない。そのお返しにと、自ら大量のプレゼントを用意したというわけだ。

 プレゼントは、監督だけにではなかった。監督とともに来日したキャスト3人にも、初対面だったが、同様のプレゼントを用意していた。「KANO-」で永瀬を知っている3人は、当然大喜び。「ハグして」「(「KANO-」の近藤監督になりきって)叱ってほしい」などの要望にも、快く応えていた。

 恩は恩で返す。おもてなしの心を忘れない。永瀬正敏は、どこまでもナイスガイだった。