09年に亡くなった日本舞踊家、藤間紫さんの名跡を継ぎ、昨年2月に紫派藤間流家元を襲名した3代目藤間紫(27)が30日、東京・国立劇場大劇場で襲名披露・紫派藤間流舞踊会を開いた。歌舞伎舞踊の中で女形の最高峰と言われ、祖母も流派の舞踊会で披露したことがない「京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)」に挑戦。昨年、連ドラのレギュラー出演に初挑戦した女優・藤間爽子とはひと味違う、家元として新たな一歩を踏み出した。
◇ ◇ ◇
弟子がひもを引くと、3代目紫の着物は深紅から若草色に早変わりした。舞台上で衣装を一瞬で変化させる引き抜きは最大の見せ場で、3度の引き抜きと場面転換で深紅から若草、藤、薄黄、再び深紅と、めくるめくばかりの着物が飛び出した。演じた白拍子花子は、愛する僧安珍が隠れた鐘に蛇体となって巻き付き、溶かしてしまう清姫の化身の役どころ。かれんに舞う中、女の情念が湧き出て鐘に巻き付いてしまうという演目の最後には、蛇体を思わせる赤と金の三角模様の着物姿で、高さ4メートル弱の鐘の上に立ち上がった。
昨年2月に師で2代目紫の市川猿翁(82)から継承した際、初世十三回忌追善も兼ねた襲名披露舞踊会の日程が内定していた。演目に「祖母に習っていない。踊ったのも見たことがないですが、踊らなくてはいけない」と「-道成寺」を選択。同4月には京都の妙満寺にある道成寺の鐘を見に行った。「大道具の鐘が京都で実際に見た鐘だと思えるか、思えないかでは違う」との思いからだった。
コロナ禍で開催への不安を抱えつつも「27歳の私の恋心や等身大がいいのかな。しっかり踊りを見せていくのが大事」と祖母を意識して背伸びせず、振りなど基本を一から学び直し連日、夜遅くまでけいこ場にカンヅメになった。昨年11、12月に所属する劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」の舞台「老いと建築」出演中は、オフや深夜を使って、けいこ量をキープ。女優業との二足のわらじに真正面から挑んだ。
第2部の最後には、初代藤間翔(かける)を襲名した兄貴彦(30)と「道行初音旅(みちゆきはつねのたび)」を演じた。父文彦さんは「下を見る目線、首、背中の使い方は母に似ている。出来は良い」と評価も、3代目紫は「無事に踊れた喜びと安堵(あんど)と古典演目の厳しさを痛感しました」と反省。「勉強不足、整理できていないところが明白に分かった。態勢を整え、個人としては29歳までに何か形として残るものをやりたい」と貪欲に語る瞳は、輝いていた。【村上幸将】
◆藤間爽子(ふじま・さわこ)1994年(平6)8月3日、東京都生まれ。6歳で歌舞伎座の舞踊会で祖母とともに初舞台を踏む。17年3月に青学大文学部を卒業し、同年のNHK連続テレビ小説「ひよっこ」に出演。翌18年に「半神」で初舞台。昨年7月期の日本テレビ系ドラマ「ボイス2 110緊急指令室」で連続ドラマ初のレギュラー出演。今年、テレビ東京系で放送される「僕の姉ちゃん」に出演。身長154センチ。



