第94回アカデミー賞で、邦画で史上初の作品賞、脚色賞(共同脚本の大江崇允氏も)監督賞、国際長編映画賞の計4部門にノミネートされた、「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督(43)が9日、滞在先のドイツからオンラインで会見を開いた。

アカデミー賞の作品賞、監督賞のノミネートには、米国のスティーブン・スピルバーグ監督(75)の「ウエスト・サイド・ストーリー」(11日公開)ら世界的な監督の作品が名を連ねた。授賞式が行われる米ロサンゼルスは、映画の都ハリウッドもあり世界のエンターテインメントの中心地だ。一方で「ドライブ・マイ・カー」は、登場人物の心の内面を描く、エンタメ大作とは対極にある、アート系で規模も大きくない作品だ。名監督たちと激突する思いは? と聞かれると、濱口監督は「激突するということなのか、どうかというのも正直、よく分からないところ。あらゆる映画が、それぞれの価値を追求している。たまたまハリウッド的な作り方と、アートハウス的な、日本で言ったらインディペンデント映画的な作り方が存在していて、自分は、それ(インディペンデント的な作り方)を極めていくしかなかった」と語った。

その上で「自分の映画と、その人たちの映画が違ってくるのは当然だし、同じ土俵で戦うとは、ちょっと思えないというか。それぞれ、やってきたことがあって、それが悪いか、いいかというのは決して決められない」と語った。一方で「ただ、賞を与えることによって、映画産業全体に活力を与えていく側面が必ずあると思う。そういうのを、ノミネートされた人たちは、みんなして請け負っていくということなのではないか」と映画祭や賞が映画産業、業界に与える効果の意義を強調。そして「戦いではなくて、お互いにやったことに対して敬意を払いながら、その中に自分が加われたことを光栄に思いつつ、参加できたらよいなと思っています」と語った。

また濱口監督は、韓国映画「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)が、20年に非英語作品として初の作品賞をはじめ監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4冠を獲得したあたりから「選ぶ側が、なにがしか変わってきているということなんだと思う」と指摘。「普段、見るような映画だけでなくて、別な種類の映画に興味を持ってきている。そういう変化の恩恵といったらなんですけど、そういうものを受けているという感覚はある」と、アカデミー賞の評価基準が変わってきていることがノミネートに繋がったのでは、と持論を展開した。そして「恐らく『パラサイト』が4部門を取られた時から、アジア映画に対しての見方が変わってきている。面白い映画がアジアにもあるということを、米国の一般的な観客も含めて思っている。視線の変化がある」と語った。

また、邦画初の作品賞、脚色賞にノミネートされたが「歴史的に、それまであった映画より優れているかと言われると、それは分からない」とも口にした。その上で「あくまで歴史が変わってきて、歴史で初めて(邦画が作品賞にノミネート)という事態が起きているのじゃないだろうか? 選ぶ側の感覚が変わってきたのが1つの理由としてあるのじゃないか」と分析した。