テレビ報道について2つの思いを抱いた。先日、日本民間放送連盟賞近畿地区報道部門の審査をした。今年もまた、取材対象によっては数年がかりになるドキュメンタリーに取り組む記者の姿に心打たれた。

その一方で残念というより心底、憤りを覚えることがあった。このままではテレビは確実に見放される。

一連の問題を受けて、フジテレビは先週日曜日、検証番組「~反省と再生・改革~」を1時間45分かけて放送した。

役員など要職にあった人が女性社員を指名、接待要員のようにしていた人もいた。底無しの倫理観にあらためて怒りが湧いてきた。だが、この番組、そうしたことへの反省は盛り込まれていたが、検証番組としてはまったく体をなしていなかった。

多くの人が注視していた日枝久元取締役・相談役が番組に登場することはついになかった。40代で局幹部となり、会長時代の24年間で8人の社長の首をすげ替えたという日枝氏。

この権力者について役員に「逆らったら大変なことになる」などと語らせながら、「番組は日枝氏に3度取材を申し込んだが、応じることはなかった」と、一片の取材依頼書を見せて終わっている。

そもそも組織の不正を検証する番組が、責任ある人物にふれないままで成立することは絶対にあり得ない。

だが私は、失望しても絶望はしていない。記者の中から「日枝を突っかけ(自宅や出先で直撃)させろ」という声が出たはずだ。日枝氏抜きの検証番組に「恥ずかしくないのか!」という言い合いもきっとあった。

そしてここで大事なことは、記者やカメラマンの本性、本能として、必ずだれかが音声や映像、最低でもメモ書きを残しているはずだ。ぜひそれを洗いざらいオープンにしてほしい。そこから噴き出してくる社会の声に、どう応えるのか。フジの再生・改革の第1歩は、その時踏み出される。

◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。TBS系「ひるおび」東海テレビ「ニュースONE」などに出演中。