地方の静かな町で民家に押し入ったトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)の少年に家族がメッタ打ちにされる。兵庫や大阪では高齢の母と娘が惨殺された。人々が恐怖に震えているときに記者たちは、ただ警察が言うがままを右から左に流すだけでいいのか。ふつふつと怒りがわいてくる。
兵庫県たつの市で母親(74)と娘(52)の刺殺体が5月19日、自宅で発見された事件は、半月たっても犯人は逃走したというより、取り逃がしたままだ。
この事件で県警は24日夕、突如40代の男の逮捕状を取ったと明らかにした。NHKの「ニュース7」では放送終了間際に「大山賢二容疑者(42)を全国に指名手配」と報じ、同時に顔写真とリュックを抱えて歩く姿を放送。県警が情報提供を呼びかけているとした。
だが母娘と容疑者の関係にはふれずじまい。ところが、その後流れ出した地元紙や全国紙の電子版を見て卒倒しそうになった。
大山容疑者は10年前まで、いまは空き家の母娘の隣家の住人。それも驚きだが、この男、2人の遺体が発見される3日前の16日深夜、警察官と一緒にいたのだ。
たつの市とは姫路市を挟んで西、高砂市で道路に寝ているところを通報で警察官が駆け付け、署で話を聞くと「たつので人を殺した」と言う。だが意味不明の言葉も多く、話がかみ合わず、署員が男をたつの市の10年前の自宅まで送り届けたという。大山容疑者の犯行は13日ごろ。この時、隣家には母娘の遺体があったのだ。
兵庫県警は事件発覚直後から、この事実をつかんでいたはずだ。だが「市民に知らせる必要性はないと判断した」という。
すでに母娘を殺害。警察官に「人を殺した」と言う男を深夜の住宅街に放り出すとはどういう神経か。記者はペンで、マイクで怒りを爆発させないでどうするんだ。こんな警察とメディアに囲まれて市民は、きょうも凶悪事件の発生に身を震わせておびえている。
◆大谷昭宏(おおたに・あきひろ)ジャーナリスト。東海テレビ「ニュースONE」静岡朝日テレビ「とびっきり!しずおか」など出演中。


