★先月30日から今月1日までシンガポールで開かれていた「第23回シャングリラ・ダイアログ」(アジア安全保障会議)。英「国際戦略研究所」(IISS)が主催し、02年に始まった。背景には89年の中国天安門事件がある。欧州には「対話による平和」を目的としたミュンヘン安全保障会議が1963年からあるが、アジアにも安全保障会議の設立が急務という認識から始まった。04年には米中の国防相も参加し現在の形になっていく。それも必然でアジア全域はともすれば米中の代理戦争に巻き込まれかねないからだ。米中は毎回舌戦を繰り広げた。

★ところがその緊張感が今年図らずも途切れた。米ピート・ヘグセス国防長官はスピーチで1度も「台湾」という言葉を発せず「米中双方は互いの能力を認識し尊重し合う段階にある」とまで言い「私たちが直面する課題は現実のものだが、眼前にある機会もまた現実だ」と穏やかな言葉でまとめた。一方中国は董軍国防部長(防衛相)が欠席、孟祥青・中国国防大学教授が日本にかみついた。まとめれば日本が平和憲法や非核三原則の改正を推進し、同盟国(米国)による核兵器配備を求めていると主張。また昨今の防衛力強化を日本の「新型軍国主義」と強烈に批判した。だが学者の説にして政治的発言にしなかったところが巧妙だ。

★米国との同盟かそれに準ずる関係を持つ参加国は韓国、フィリピン、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、インド。防衛相・小泉進次郎は彼らの賛同を背景に「平和国家としての日本の歩みは、虚偽の主張で揺らぐことはない」「考えてみてください。核兵器と戦略爆撃機を大量に保有する国があるのに、いずれも持っていない日本が『新型軍国主義』と呼ばれるのは奇妙だ」「対話の扉は常に開かれている」と反論したが、首相・高市早苗の「台湾有事『存立危機事態になりうる』」発言、日米同盟の存在に触れず、22年には歯止めとなっていた防衛費GDP1%枠をやめ、安保3文書を改訂となれば小泉の理屈は首相の理屈と同じで通用しない。1日、中国外務省の林剣副報道局長からは「見せかけであり、誠意がまったくない」と一蹴された。(K)※敬称略