三原じゅん子参院議員のセミナーであいさつする菅義偉前首相(21年12月7日撮影)
三原じゅん子参院議員のセミナーであいさつする菅義偉前首相(21年12月7日撮影)

2022年が始まり、岸田政権は、いわゆる国民との「ハネムーン期間」といわれる政権発足100日を1月11日に迎え、越えた。そのタイミングと重なるように、新型コロナのオミクロン株が想像以上の猛威をふるい始めている。発足からの3カ月間、コロナが収束した状況だったこともあり、政権を揺るがすような重大テーマ、「アラが目につく」ようなこともあまりない感じだったが、コロナの感染急拡大が始まった今、ワクチン接種体制をはじめ、真価が問われる局面がいきなり訪れた格好だ。

昨年末、師走の永田町で「来年注目すべき政界のキーマンは」と複数の人に質問した際、話題にのぼる人は結構、重なった。主役は岸田文雄首相のはずだが、むしろ、前首相、元首相らの動向に関心が注がれていた。岸田氏がなんとなく順調に滑り出した中、関係性が微妙とみられている安倍派会長、安倍晋三元首相。1強幹事長の座を降り「冷や飯組」といわれながらも、存在感は消えない二階俊博氏。そしてもうひとり、特に今後の動向に関心を集めていたのが、菅義偉前首相だった。

新型コロナデルタ株の感染拡大のさなか、「後手後手」批判も浴び、昨年9月に首相を退陣したものの、その後、在任中のワクチン対策が功を奏したのか、デルタ株は収束に転じた。その菅氏、昨年末からメディアを含む露出が増えている。年末には、二階派幹部や石破茂氏ら、岸田体制下での「冷や飯組」と会食。「政治家が集まってメシを食う時、何のたくらみも生まれないわけがない」と聞いたことがあるが、この時の会食も「新たなグループ結成では」など、勘ぐりが続いている。

菅氏といえばコロナのワクチン。首相在任中、ワクチン接種は結果的に進み、首相辞任後、結果的に感染者数は激減した。

先月7日、首相時代に厚労副大臣に抜てきした三原じゅん子参院議員のセミナーに、菅氏の姿があった。この場でのあいさつでも、多くの時間をワクチン接種の話題に割いていた。自身の経験を踏まえ「欧米で状況が一変したのは、ワクチン接種が始まってから。切り札はワクチンだと確信した」と述べ「1日も早く1人でも多くの方に接種をすることが政府の責務。1日100万回と(目標を)発表した時は2、3日眠れなかった。マスコミには楽観過ぎると批判された」とした上で「結果的には、そうしたこと(1日100万回接種)ができた。そして猛威を振るったデルタ株も、勢いを失って圧倒的に重症者も減った。それが実態ではないでしょうか」と、胸を張るような口調で語っていた。

ちなみに、その前日には、自民党内最大派閥清和会の会長に就任した安倍氏が、派閥のお披露目パーティーに登壇。岸田政権を支える姿勢を表明した安倍氏も、メディア露出を含めて表舞台で見る機会がますます増えている。

安倍派パーティーであいさつする安倍晋三元首相(21年12月6日撮影)
安倍派パーティーであいさつする安倍晋三元首相(21年12月6日撮影)

新しい首相が始動すると、前任者の言動はあまりおおっぴらになってこなかったのが、これまでの政権。しかし、今は時の首相以外にも、直近の首相経験者の存在感が消えないどころか、じわじわ大きくなっている。特に、コロナ対応に権力闘争も重なり、中途半端な形で首相の座を降りることになった菅氏については、ワクチン対応をめぐって「再評価」の声も上がり始めている。「菅さんは、必ず動き始める。そうでないと、こんなに表に出てくるはずはない」。昨年末、政界関係者が漏らした言葉だ。

思えば、菅氏もその前任の安倍氏も、コロナに打ち勝つ前に総理の座を去ることになった。コロナという「壁」がいかに高いかを物語るが、オミクロン株急拡大の今、岸田首相にも、同じハードルが試される状況になっている。【中山知子】