自民、公明両党幹事長は9日、派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた政治資金規正法改正の与党案に大筋合意した。パーティー券購入者名の公開基準額を現行の「20万円超」から引き下げ、改正案に盛り込む。具体的な額は決めなかった。政策活動費については、政党から支払いを受けた政治家が使途を報告し、党が政治資金収支報告書に記載するとした。企業・団体献金の扱いには言及しなかった。

岸田文雄首相が週内の与党合意を指示していた。自民の茂木敏充、公明の石井啓一両幹事長が合意文書に署名した。自公はそれぞれ来週中に党内手続きと条文化を進め、野党側に提示する。

立憲民主党、日本維新の会などの野党は既に党の案をまとめており、企業・団体献金禁止を訴えている。与党に対し、立民の岡田克也幹事長は記者団に「透明性の観点から全く不十分だ」と指摘した。今後の衆院政治改革特別委員会の審議の難航が予想される。

与党案は、政治団体間で移動させた資金の透明化も取り上げた。政党支部や資金管理団体といった「国会議員関係政治団体」から、「その他の政治団体」に当たる後援会に年間1千万円以上移動させた場合、国会議員関係政治団体と同等に支出を公開させる。茂木氏らの後援会で具体的な支出内容が分からず、問題視されたことを受けた。

パーティー券の基準額は、公明が「5万円超」を主張したのに対し、自民は資金集めへの影響を懸念し「10万円超」を求めた。両党実務者は9日午前、午後と協議を重ねたが折り合えなかった。

使途報告義務がない政策活動費は、自民が党幹部に年間10億円前後支出するなど疑問視されてきた。与党案は、政党が支出項目を公表するとした自民案と、議員に明細書作成を義務付ける公明案の間を取った形だ。

裏金事件を踏まえた政治家の責任強化では、収支報告書提出時に議員による「確認書」添付を義務付ける。会計責任者が処罰され、議員が内容を十分確認せず確認書を交付した時に刑罰を科し、失職と公民権停止につながるとした。いわゆる連座制と位置付ける。

公明案に沿い、政治資金を監督する第三者機関について「活用など検討を行う」と記載した。(共同)