「牛と衝突」「人がいます」「ここは帰還困難区域です」。2011年3月11日に発生した東京電力福島第1原発事故から6年7カ月。国道6号の沿道に立てられた注意喚起の看板や標識は色あせていた。大熊町、双葉町の立地町を含む福島5区。原発政策が争点の1つに上がる中、自民党の吉野正芳氏(69)が復興相として初の選挙を戦っている。

 11日、楢葉町役場前に立った吉野氏は「政治の安定なくして経済の発展なし。経済の発展なくして、社会福祉もまち作りもすべてない」と自公政権への投票を訴えた。「東北でよかった」発言で更迭された今村雅弘前復興相の後任として、4月に就任したばかり。再選して「ロボット研究開発拠点などを集積する『イノベーションコースト』構想を推進し、日本で一番稼げる地域にしたい」と話した。

 対抗馬として立候補したのは民進党前職で今回は希望の党から出馬する吉田泉氏(68)。前回の衆院選で吉野氏に敗れ、昨年引退を表明していたが、今年7月に繰り上げ当選で復活。後任候補の擁立が難航し、支持者らに推される形で、先月末に出馬を決め、希望の党に合流した。吉田氏は「小池百合子代表は、日本人ばなれしたスケールとセンスを持っている。少々荒っぽいが我々民進党出身者がわきで支える」と支持を訴える。

 昨年の参院選では、野党共闘が実現し、自民党の岩城光英法相が落選した。今回、福島5区では野党が割れたが、吉田陣営は「希望の党には、無党派層から一定の期待感がある」と手応えも口にする。吉野陣営は「前復興相の発言の影響は大きく、モリカケ問題も影響している」と危機感を隠さない。吉野氏は「逆風だと思っています。当選しないことには復興相として働けない」と、スニーカーに鉢巻き姿で精力的な選挙を続けている。【清水優】