東京・銀座の中央区立泰明小学校が、高級ブランド「アルマーニ」がデザインした約8万円の新制服導入を決め、保護者らから批判が上がっている問題で、同小の和田利次校長(62)が9日、区役所で記者会見し、新制服の導入方針を「変えるつもりはない」と表明した。高額で購入できない家庭については「個別に相談させていただきたい」とし、公的な援助の手続き方法などを周知するという。バーバリーやエルメス、シャネルなどのブランドにも校長が単独交渉したというが、価格上限などの要件は定めていなかったという。

 スーツ姿で会見した和田校長は、アルマーニ製の制服導入の方針について「変えるつもりはございません」と断言した。1月下旬から今春の新入生60人の採寸が始まっており、「全員ではないがほとんど採寸に来ている」とも説明。高額だが「本校の児童のご家庭なら、出せるんじゃないかと思う」と話した。購入できない家庭が出た場合、その児童を「バカにしたりしないよう(他の児童に)徹底したい」と話した。

 「きちんとした心構えと志で学ぶのが泰明らしさ。その意識を持たない方が増えてきた」と感じ、「泰明らしさを取り戻す1つのスイッチ」として、約3年前に導入を思い立ったという。銀座のバーバリー、シャネル、エルメスなどに、校長自身が電話したが、反応はなかったという。アルマーニだけは同社に勤務する人物の知人を通じて交渉。実現にこぎ着けた。

 保護者に相談せずに独断で進めたことを「アルマーニ様からはっきりしない話は外に出さないでくれと言われた。保護者に言うのをためらった原因かも」と振り返った。交渉が不透明では、あらぬ疑惑も持たれかねない。「校長はアルマーニのスーツを持っているか」と問われると「持っていない。ハンカチくらい持っているかも知れないが、特別な関係はない」とした。

 服を買える家、買えない家が出れば、経済力による児童の分断の種になりかねないが「そういうことが考えられるのは想定していた」という。一方、アルマーニとの交渉時には上限価格も提示せず、昨年11月に価格提示があった時には「高い」と思いながらも、素材の質を下げるなどの交渉もしなかった。「アルマーニさんが決めた生地ならそれがいいと思った」。

 購入が難しい家庭には「入学準備金の制度や就学援助の制度を情報提供する。あとは類似品とか。解決できると思っている」。アルマーニ製の制服は「標準服」で、着用は義務ではないが、着用しない児童に対しては「嫌な思いをしたら、教員に伝えて」と指導するとともに、徐々にそろえるよう求めていくという。【清水優、太田皐介】