ジャーナリストの伊藤詩織さん(30)が、元TBSワシントン支局長の山口敬之氏(53)から15年4月に性的暴行を受けたとして、1100万円の損害賠償を求めて起こした民事訴訟の判決で、東京地裁(鈴木昭洋裁判長)は18日、山口氏に330万円を支払うよう命じた。

伊藤さんは判決後、都内の司法記者クラブで会見を開き「これがゴールではない」と口にした。この日の午後には、山口氏も会見を開き「今回の判決は、一方的に伊藤さんの主張だけが、根拠なく取り入れられてしまった」と控訴する意向を示したが、伊藤さんは山口氏の控訴を含めた今後について聞かれると「(民事訴訟の)プロセスで知ったこと、出来ることはたくさんある。ピリオドであるけれどもスタートすることもある」とだけ言及した。

伊藤さんは当初、準強姦(ごうかん)容疑で警視庁に被害届を提出したが、東京地検は16年7月に嫌疑不十分で不起訴とし、東京第6検察審査会も翌17年9月に、不起訴を覆すだけの理由がないとして不起訴相当と議決した。判決後「刑事事件で不起訴となってしまったこともあって、どんな証拠、証言があったのか、私たちは全て知ることが出来なかった。民事訴訟を起こすことで公に出来る証言、新しい証言、こちらの言い分だったり、しっかりと聞けた」と語っていた。

伊藤さんは、質疑応答の中で「国内でなかなか声が上がらなかったのではないか?」と聞かれると「私は思った以上に声が上がっていると思うが(性暴力被害者の声を)どう、すくい上げるか。海外では『#MeToo』運動も起きたが『#MeToo』ではなく『#WeToo』という言葉にしたら?」と語った。

その上で「私が体験したようにリスクはある。誰もが被害者、加害者、傍観者にならず、みんなで考えないといけない。密室で行われることもある。社会全体で、自分事として欲しいと思っている。ネット上で、私に対する冷たい声もあふれている。なかなか助けてと言えなくなる。冷たい声、いかにセカンドレイプのようなことと向き合い、負けないようにできるか」と語った。【村上幸将】

◆伊藤詩織さん裁判 伊藤さんは米国の大学に在籍した13年12月に、アルバイト先のバーで山口氏と知り合った。正社員としての就職先を求めるメールを送信したことをきっかけに、帰国した15年4月3日に山口氏と会食した際、意識を失い、ホテルで暴行を受けたと主張。準強姦(ごうかん)容疑で警視庁に被害届を提出した。同6月には山口氏の逮捕状が発行されたが、逮捕直前に取り消されたという。一方、山口氏は合意に基づく性行為だと反論した。東京地検は16年7月、嫌疑不十分で不起訴とした。伊藤さんは、翌17年5月に不起訴不当を訴えたが、東京第6検察審査会も同9月、不起訴を覆すだけの理由がないとして不起訴相当と議決した。