大学入学共通テスト(21年1月開始)への英語民間検定試験と国数記述式問題の導入見送りを受けて設置された「大学入試のあり方に関する検討会議」の初会合が15日、東京・文科省で開催された。萩生田光一文科相は「公平でアクセスしやすい仕組みはどういうものか、延期せざるを得なくなった経緯の検証も含め、精力的な議論をお願いする。あの時、足を止めて話し合ってよかったといわれる制度をつくってほしい」などと要望した。会議は原則公開で行い、年内をめどに24年度入試に向けて提言をまとめる方針。

会議は有識者委員11人と団体代表委員7人で構成され、大学入試センターの山本広基理事長がオブザーバー。座長の三島良直・東工大前学長は「公平性や公正性が重要。受験生や国民が不安を感じる制度であってはならない」「今回なぜこういうことが起こったか、経緯をしっかり検証しないと同じことになる。なんとか方向性を定めたい」などと話した。

この日は各委員が現時点での考えなどをひとことずつ発言したが、さまざまな意見があった。末冨芳・日大教授は「この会議は白紙で原点に立ち返ってということでいいか」と確認し「拙速な改革が格差拡大に機能してしまうことを懸念していた」と立ち止まる決断を評価。「専門家や現場の多様な意見を吸い上げるべき」とした。

両角亜希子・東大准教授は「何人もの専門家が指摘してきたことがなぜ反映されなかったのか、経緯を徹底的に検証しなければ同じ失敗を繰り返す。教育の課題は教育の現場で解決されるべきで、入試で解決できることではない」などと指摘し、やはり専門家の知見を生かすよう求めた。

日本私立中学高等学校連合会会長の吉田晋・富士見丘学園理事長は「日本の教育が世界に遅れてきていることに対応するために提言され、高校や大学の教育、入試を変えようということだったはず。我々が何年間も費やして決めてきたことをゼロにするのか」などと話した。

清水美憲・筑波大教授は「目的と手段、何を前提にするのか、交通整理が必要。共通テストと個別入試の守備範囲を切り分けながら議論していかなければ」などと提案した。

なお、大学入試センターは、来年1月の新共通テストについて、国数記述式問題などの見送りに伴う対応について、今月中に発表する意向を示した。

【委員】▼有識者=座長・三島良直(東京工業大前学長)、荒瀬克己(大谷大教授)、川嶋太津夫(大阪大高等教育・入試研究開発センター長)、斎木尚子(日本ラグビー協会理事)、宍戸和成(国立特別支援教育総合研究所理事長)、島田康行(筑波大教授)、清水美憲(筑波大教授)、末冨芳(日本大教授)、益戸正樹(UiPath特別顧問)、両角亜希子(東京大准教授)、渡部良典(上智大教授)

▼団体代表=岡正朗(国立大学協会入試委員会委員長、山口大学長)、小林弘祐(日本私立大学協会入試委員会委員長、北里研究所理事長)、芝井敬司(日本私立大学連盟常務理事、関西大学長 ※この日は圓月勝博・同志社大学長補佐が代理)、柴田洋三郎(公立大学協会指名理事、福岡県立大理事長)、萩原聡(全国高等学校長協会会長、都立西高校長)、吉田晋(日本私立中学高等学校連合会会長、富士見丘学園理事長)、牧田和樹(全国高等学校PTA連合会会長)

▼オブザーバー=山本広基(大学入試センター理事長)※敬称略