高知・安芸市の菊水酒造株式会社が、消毒用アルコールと同等のアルコール分を含む、度数77度の高濃度スピリッツ「アルコール77」を10日から販売する。8日、同社の春田和城社長が取材に答えた。

スピリッツは酒税法では蒸留酒と同一ではないものの、一般的には蒸留酒のことを指す。本商品も酒類に分類される。開発のきっかけとなったのは18年7月豪雨。同社が被害を受けた際に支援を受けた経験から、恩返しの意味も込めて、役に立つ製品を提供したいとの思いからだ。

「新型コロナウイルスの流行により、酒類原料である醸造アルコールは潤沢に流通しているにも関わらず、同じエタノールである消毒用アルコールや除菌用アルコール製剤が手に入らない状況が長期化していることに対し、酒類メーカーとして何かできるのではないかと考え開発致しました」。

2月下旬頃に開発を想定した検討に入り、3月中旬頃から製造開始に向け本格的に始動した。通常の商品開発に比べ、関係省庁が多く、確認事項が多岐にわたったが、「各省庁には丁寧なご指導を頂き商品の製造に至りました」と振り返った。

本商品はすっきりとした高濃度エタノールを含むスピリッツであるためクセはなく、ほんのりとしたレモンの風味がついている。度数が高くそのまま飲むのは難しいが「お客様のお好みに合わせて割材で割って頂く等していただければ、おいしく召し上がることができます。また、アルコールが物足りないと感じた時などにもご利用いただけます」と説明した。

500ミリリットルで価格は1200円(税別)。ホームページ(http://www.tosa-kikusui.co.jp/top.html)上では「9日夜に販売サイトを掲載いたします」と告知している。現在は1日1000件を超える問い合わせがあり、対応に追われている。高齢者や子供がいる家庭、病院等医療関係からの注文もあるという。

7日には7都府県で緊急事態宣言が発令された。経験したことがない危機に、江戸時代から続く伝統ある酒蔵が立ち上がった。【南谷竜則】