東京都の小池百合子知事は13日、菅義偉官房長官が感染確認の急増を「東京問題」と表現したことに対して「国の問題」と、反発した。感染者が全国で再び増加している中、政府が旅行を促進する「Go To キャンペーン」の前倒しを発表したことにかみつき「冷房と暖房の両方をかけるようなこと」と、批判した。2人はもともと折り合いが悪いとされてきたが、コロナ禍で連携するべき政府と東京の足並みの乱れが、思わぬ形で表面化した。

国と東京都の間で新たな火種となった「東京問題」は、菅氏が11日、北海道での講演で発言。「この問題(コロナ感染の急拡大)は圧倒的に『東京問題』と言っても過言ではないほど、東京中心の問題になっている」と述べたものだ。

小池氏は13日、取材に「逆に言えば、圧倒的に検査数が多いのが東京だ」と菅氏の発言に反論。「それによって陽性者が出てきており、無症状の方がかなり含まれていることが分かってきた」と訴えた。

収まらない小池氏は、東京を中心に全国に感染確認が広がるタイミングで、政府が観光割引事業を22日から始めることに言及。「逆に『Go To キャンペーン』が始まろうとしている中、その辺の整合性を国としてどう取っていくのか。体調不良の方は都外へお出かけにならないよう伝えているが、無症状の方も出ている中、どう仕切りをつけていくのか」と指摘。「冷房と暖房の両方をかけるようなこと」と不快感を示し「これはむしろ国の問題だ」と、やり返した。

小池氏の国会議員時代から、関係が良くないといわれてきた2人の舌戦。菅氏が、都の責任を問うような表現を使うのは「小池氏は各区任せで、都内で統一的な対応が取れていない」(都議)との不信感があるためとの見方もある。

菅氏は会見で「東京問題」発言について「全国の新規感染者の半数以上が都で、クラブなどの店舗数が多いことも踏まえた」と説明した上で、都や区との連携を強調。小池氏がかみついた「Go-」の開始延期については「全く考えていない。適切に実施したい」と述べ、小池氏の反論には「政府の立場でコメントすることは差し控えたい」と、多くを語らなかった。

国と都の間では、都民に他県への不要不急の移動自粛を求めた小池氏に対し、政府は県またぎの移動を容認するなど、ちぐはぐなやりとりが続く。ただ、コロナ禍に加え豪雨災害が続く中の「Go-」実施には、さらなる感染拡大や混乱への懸念が強いのも確かだ。

◆Go To キャンペーン 新型コロナウイルス感染症の影響で、需要が落ち込んだ業界の支援策。政府は、全体で1兆6794億円を支出する。規模が最も大きい「トラベル」は宿泊、日帰り旅行の代金割引などで、旅行消費を促す目的がある。飲食店の利用料金を割り引く「イート」、コンサートや演劇、スポーツなどのチケットを割り引くなどの「イベント」、商店街の行事、販売促進を後押しする「商店街」もある。