東京・池袋の都道で19年4月に乗用車が暴走し、松永真菜さん(当時31)と長女莉子ちゃん(同3)が死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪で在宅起訴された、旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の第3回公判が14日、東京地裁で開かれた。

同被告の弁護側の冒頭陳述が行われ、同被告が事故発生時に運転していたトヨタ「プリウス」の電気系統などの経年劣化が事故の原因で、同被告はアクセルペダルとブレーキペダルを踏み間違えていないなどと主張した。

被害者参加制度を使って裁判に参加した、真菜さんの夫の松永拓也さん(34)と父の上原義教さん(63)は公判後、会見を開いた。上原さんは「人間だから人には過ちがある。罪を認めて償って欲しい。今日もひとごとのように聞いていた。反省のなさが…心から自分のこととして受け取って、謝っていただきたい」と、飯塚被告の法廷内での態度に怒りと悲しみをにじませた。

松永さんも「(法廷に)入ってきた時に、こちらに会釈もない。(裁判が)ひとごとだと、どうしても感じてしまう。2人の命と私たちの遺族の無念…分かってくれているのか。それが感じられないのが苦しいし、悔しい。証拠と意見書を見て、こんなに長くやることなのかなと」と涙で声を詰まらせた。

飯塚被告の弁護人は、同被告が交差点を左折する前から右足をブレーキペダルの上に置き、左折中はブレーキ、アクセルともに踏まずに惰性で走行したがスピードが出ていたと主張。同被告はパニック状態に陥りながらもアクセルを目視したなどとし、ブレーキとアクセルを踏み間違えていないと主張した。それに対し、松永さんは「(左折は)2、3秒のこと。そもそも、目視できるのか?」と首をかしげた。

また、飯塚被告の弁護人は事故当時の同被告の健康状態について「事故当時、88歳。確かに高年齢と言われる年齢だが、運転に差しさわる障がいはない」などと主張した。松永さんは「健康に特に問題はないと主張したが、一般的に見て、あの状態で運転することが皆様から見て、どう思いますか? と私は問いたい。一般的な健康と、運転の健康は私は違うと思う」と疑問を呈した。

松永さんの弁護人を務める高橋正人弁護士も、プリウスの電気系統の経年劣化が事故の原因だという被告弁護人の主張を引き合いに「車の経年劣化と主張しているが、ご自身の経年劣化は考えないのか。車を操作する能力は、加齢とともに落ちてくる。全て車のせいにするのはずいぶん、身勝手」と首をかしげた。