東京五輪新競技の空手が5日に始まり、全国の道場でも一喜一憂した。女子形で清水希容(27=ミキハウス)が銀メダルも、期待していた金発進とはならなかった。横浜市の「国際空手塾」では、女子組手55キロ級の宮原美穂(24=帝京大職)の1次リーグ敗退が稽古中に伝えられると、道着をまとって汗だくの子どもたちから「組手の男女でメダルなしなんてくやしすぎる~」の声。中には頭を抱えて「宮原さんは金だと思っていたのに~」と崩れ落ちた男児もいた。

指導に携わっている元世界王者の永木伸児塾長(39)は「空手がやっと五輪に入ったというスタート。夢の大舞台ですし、競技をしていた1人としては、うらやましい部分もある。世界選手権以上に、さらに空手を知ってもらう良い機会」と喜んだ。1日目の金メダリスト誕生はならなかったが、「形で言えば外国人には力強さがあるけれど、清水さんを含めた日本人は細かい技術がレベルアップしている。組手も強い選手がそろっていますし、明日以降の日本勢に期待です」。空手は競技人口の多いフランス開催のパリ五輪でも継続が予想されていたが、落選が正式決定。28年ロサンゼルス五輪で再選への活動が続いている。「『天才は努力に勝てない。努力は夢中に勝てない』という言葉を聞いたことがある。のめり込める大切さ。子どもたちにもゲーム感覚で楽しんでもらえるように魅力を伝えていきたい」。19年に千葉県柏市で立ち上げた自身経営の道場での指導を含めて、底辺拡大に尽力する気持ちも高めた。

家族4人で空手に親しむ益田亜希子さん(46)は「主人と息子2人でベランダで形の成り立ちなども話しながら練習している。私の祖父も空手が五輪種目になってほしいといつも言っていた。天国で喜んでいると思います」と空手が絆となっていることを強調した。 最年少の野上隆世くん(5)も「パンチとキックが楽しい」。「オリンピックの試合を見て、私も空手でオリンピック選手になりたい」と力の入る姉瑠夏さん(8)に立ち向かった。ロボットを作る発明家になる夢を抱く青木陽奏くん(9)は「空手で力がつけばロボットをつくる重い道具も運べるようになる」と基礎体力を磨く。そんな兄の姿に弟陽大くん(6)も「お兄ちゃんが強くなっていくので、僕も強くなって世界チャンピオンになりたい」と背中を追っている。

横浜市強化指定選手の宮沢茉桜さん(14)は「清水さんはインタビューでも礼儀正しい。私も空手家として人間的にも成長して、誰かの役に立てるようになりたい」。増田葉月さん(12)も「私は医療関係の仕事につきたい。空手は気合、気迫、礼儀など、今後につながっていく良さがある」と将来を見据えた。

同じ新競技のスケートボードでは日本勢が男女そろって金メダルを獲得しただけでなく、宿敵の演技にも拍手を送る友情などの魅力も全世界に発信した。サーフィンも自身、相手、自然とも戦う、面白さも伝えた。空手にとっての“五輪初日”。空手界にとっても競技の魅力、迫力を伝えるだけでなく、空手家の夢や目標を再確認する1日でもあった。【鎌田直秀】