ネット上では「アゲアゲさん」と呼ばれ、「将棋ユーチューバー」として活動しながら20年にプロ棋士編入試験に合格した折田翔吾五段(33)が10日、大阪市の関西将棋会館で行われた第73期王将戦1次予選決勝で藤原直哉七段(57)に勝ち、規定によりフリークラスから順位戦C級2組への昇級を決めた。来年度の第83期順位戦から参加する。順位戦はA級からC2まで5クラスあり、リーグ戦の成績によって昇級・降級し、A級優勝者が名人戦の挑戦者になる。フリークラスから順位戦に昇級した棋士は11人目。

折田はこの日の勝利で直近の成績を20勝10敗とし、「良い所取りで30局以上の勝率が6割5分以上」の昇級規定を満たした。

終局後、「フリークラス生活が3年ぐらいあり、長かった。ようやく抜け出せて、うれしく思っています」とホッとした表情を見せた。10年以内に昇級できないと引退に追い込まれる状態をプロ4年目で脱した。

折田はプロ養成機関の奨励会でプロ入り手前の三段まで昇段し、5年10期参戦したが、16年に26歳の年齢制限に阻まれ、退会。将棋の実況をユーチューブで配信するかたわら、アマ枠で参加したプロ公式戦で棋士相手に10勝2敗の成績を収め、19年8月に棋士編入試験の受験資格を得た。棋士編入試験5番勝負に臨み、対戦成績3勝1敗で合格した。

YouTubeでは、独特なメロディーによる自作の歌を披露し、晴れ舞台でも絶妙に力の抜けた歌声を披露することもある。この日の感想戦後、名人を目指すことができる舞台に立つことができる心境について、アゲアゲさんは「♪順位戦、楽しみ~♪ ♪順位戦、楽しみ~」とビブラートをきかせながら“熱唱”した。【松浦隆司】