【米ロサンゼルス3日(日本時間4日)千歳香奈子通信員】米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた「Black Box Diaries」の伊藤詩織監督(35)が、授賞式から一夜明け、日刊スポーツの単独取材に応じた。
一問一答は、以下の通り。
◇ ◇ ◇
-米ハリウッドは、大物プロデューサーの性犯罪を契機に「#Me Too運動」が起きた“本場”ですが、その場に立って感じたことは?
「もちろん、初めてのオスカーですし、これまでニュース以外で授賞式をちゃんと見たことがなかったので、多くの熱量に圧倒されたところがあると同時にまだまだ、受賞されている人たちの顔触れを見ると白人男性が多いなという印象を受けました。1人(作品賞、主演女優賞、監督賞、脚本賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞の5部門にノミネートされ、ヘアスタイリング賞を受賞の)『サブスタンス』で、女性の監督(コラリー・ファルジャ監督)が(監督賞に)ノミネートされていましたが、彼女を見た時、ありがとうと思いました。あの5人の中で輝いて見えて、受賞されませんでしたが。こうやって少しずつ、映画業界の中で生きる女性たちにスポットライトが当てられるようになってきていますが、もっともっとされるべきことであるし。でも、きっとこれが変わってきた一歩なんだなと感じながらも、もっともっと、きっとスペースはあるはずだと思います。でも、そのスペースの1つを自分が埋められた。女性監督として。それはとても光栄なことです。ノミネートされた女性たちだけが招待される場に行かせていただいた時、そこで『ウィキッド ふたりの魔女』主演の(英女優)シンシア・エリヴォさんとお話をして、彼女のパワフルな演技だったり、存在がどれくらい私たち女性に対して勇気を与えてくれるのかということをお話しさせていただき、一緒に写真を撮ってもらいました。ノミネートされた人たちの夕食会では、今回、受賞されませんでしたが『教皇選挙』で主演男優賞にノミネートされた(英俳優)レイフ・ファインズさんに『ドキュメンタリーを、まだ1本も見られていないんだ、これから絶対見るね』と言っていただきました。ドキュメンタリーは、ハリウッドの投票者の中でも忘れられているところを、ごめんなさいと言ってくださり、そうしたところでも、ちょっとだけドキュメンタリーの位置を見せられてかなと。ドキュメンタリーは見るのに、気持ちはいりますよね。もちろん、どんな映画でも、いろいろなメッセージがありますが、映画が終わってもそれがリアルにあったことで、もしかしたら(長編ドキュメンタリー賞受賞のノルウェー・パレスチナ合作)『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』のように、今も続いていることかもしれない。見る時の精神状態や誰と見るかとか、すごく左右されることだと思いますが、だからこそ、映画館で見ることに意味があると思います。そういうことを、他のノミネーションされた方とお話しすることができました。これまではドキュメンタリーの方とお会いすることがほとんどだったので、このように映画界の方と幅広く交流できたことは私にとって刺激になりましたし、中でも(主演男優賞、脚色賞、主題歌賞にノミネートされた)『SING SING シンシン』の監督(米国のグレッグ・クウェダー監督)とは、今回ではなくサンフランシスコ映画祭でお話をしたんですが、彼もずっとドキュメンタリーを撮られていて。そこから(『SING SING シンシン』で)フィクションを撮ったんですけど、刑務所でのシアターのプログラムのお話ですが、実際に参加して出所された方をキャスティングして。彼らにしかできない演技があったり、ドキュメンタリーではできないけど、フィクションでもっとクリエーティブにストーリーを伝えていくということを教えてもらいました。本当にこの1年、いろいろな方に映画の素晴らしさだったり、何ができるのかということを教えていただき、学んだ1年だったと思います」
-今後、目指すところは?
「もっと映画を作ってみたいと今回、思いました。この1時間半、2時間を誰かと映画館で共有するというのが、自分も映画館に行って感じてきたことですが、今の現代だからこそ必要とされていることだと本当に感じて…特にドキュメンタリーですね。ニュースでパッと見るだけでなく、もっとパーソナルなレベルで考えたいことに関しては、映画できっちり、その時間をコミットして見られるというのは、すごく映画体験だからこそできることだと感じているので、もっと映画を作ってみたいと思っています」
-テーマや具体的な構想は?
「『SING SING シンシン』の監督のように実際に経験をされた方々と話しあいながら、フィクションを作っていくというのに魅力を感じています」
◆プロデューサーのエリック・ニアリ氏 私たちの映画の旅としては1つの、クライマックスポイントになったと思う。サンダンスから始まり、その後もたくさんの国や地域でで上映され、配給されてきましたが、オスカーは間違いなくクライマックスの1つだと思います。これからは日本公開に向けて新しいチャプターになります。昨日受賞できなかったことは残念ですが、素晴らしい経験でしたし、私たちには次の目標があります。少し緊張がほぐれ、次は難しいパートへと再挑戦です。まだ旅は続きます。これで終わりではありません。この映画は、国際的にも日本でも、永遠に生き続けると思います。

