恩人と思い出の地へ乗り込む。今週末の16日、フランスのドーヴィル競馬場で行われるジャックルマロワ賞(G1、芝直線1600メートル)に田中博康調教師(40)がシックスペンス(牡5)を送り込む。鞍上は前走安田記念でG1初制覇に導いた武豊騎手(57)。田中博師が騎手時代に薫陶を受けた大先輩と、新たな歴史を作る。

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田中博師はスマートフォンを強く握り締めた。今年6月3日。電話口の先は武豊騎手。用件は4日後に迫った安田記念に参戦するシックスペンスへの騎乗依頼だ。アドマイヤズームの回避で身が空いたレジェンドに、思いの丈をぶつけた。無事承諾を受け、ゲートイン。2番手から首差を制し、執念が実った。

「シックスペンスは性格、体のバランス、口向きの感じなどがなかなか難しい馬ですが、テン乗りで能力を出し切ってくれました。武さんの腕で勝たせていただいたところは大きいなと思います」

運命の糸は2011年にさかのぼる。騎手としての成長を求め、フランスへ武者修行。武豊騎手とドーヴィルで初めて食事をともにし、つながりができた。一言一句、一挙手一投足が、競馬界で生き残る術、糧になった。「誰もが認めるスーパージョッキーですから。いつか一緒に大きいところを勝ちたいなと思っていたので、安田記念の勝利はとても感動しました」と1つの恩返しがかなった。

筋書きのない物語は、きっかけの地に続いた。コンビ継続で夏のフランス競馬の大一番へ飛び込む。「非常に心強いですし、フランスでの経験値も本当に大きいですよね」と最上級の信頼を置く。勝てば98年タイキシャトル以来、日本調教馬2頭目の快挙。15年前のワンシーンが生んだ絆で、新たなドラマを書き上げる。【桑原幹久】