種牡馬ワールドプレミア(牡10)が日高を沸かせている。初年度産駒ロブチェン(牡3、杉山晴)が今春の2冠を制し、けい養先の優駿スタリオンステーション(北海道新冠町)にとっては設立37年目で初めてのダービー馬輩出となった。昨年には24頭まで落ち込んだ種付け頭数は、今年120頭超と5倍以上に。連載「ケイバラプソディー」では太田尚樹記者が現地で取材した近況をレポートする。

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ドラマさながらの光景だった。10人に満たないスタッフ全員が、事務所のテレビを囲んで口々に叫ぶ。今年5月31日午後3時40分、北海道新冠町の優駿SS。山崎努場長が昨日の出来事のように振り返る。

ダービーを制したロブチェン
ダービーを制したロブチェン

「大騒ぎでしたね。みんなでかじりつくように見て『差せっ!』って。うちにはダービーを目指すような種馬も少ないですし、出るだけで特別。日高の種馬からダービー馬が出るなんて…。しかも1番人気で勝つなんて最高のことです」

興奮冷めやらぬまま午後4時からの種付けに臨んだという。89年9月の設立から37年目。かつてオグリキャップも籍を置いた名門スタッドが、はるかな夢をかなえた1日だった。

その立役者が種牡馬ワールドプレミアだ。19年の菊花賞馬にして21年春の天皇賞馬。ただ、スタミナよりスピードを求められる生産界において、長距離馬のイメージはプラスに働かない。種付け頭数は22年53頭、23年41頭、24年33頭、25年24頭と減り続けていた。

2冠馬の父となったワールドプレミア(撮影・太田尚樹)
2冠馬の父となったワールドプレミア(撮影・太田尚樹)

初年度産駒から現れた大物ロブチェンが、苦境を一変させた。昨年末のホープフルSを勝つと、交配の申し込みが殺到。さらに皐月賞のレコードVで速力もアピールした。種付け料50万円の安価も生産者の背中を押し、集まった繁殖牝馬は120頭を超えた。

「扱いやすいですけど、精力に満ちた馬ではなく、多頭数は心配でした。それまでとは桁が違ったので。でも、いい感じで慣れてくれましたね。それでも1日3回で付けきれなくて、みなさんにご迷惑をおかけしてしまいました。子供はやわい(柔らかい)馬が多いです。だから切れ味や俊敏性がある。2、3年目でなく初年度に(活躍馬が)出たのは大きいです。頭数が増えて、いろんなタイプが出てきてくれれば」

大忙しのシーズンを終え、今は来年への英気を養っている。孝行息子も同じ北海道で夏を過ごし、史上9頭目の3冠制覇へ備える。

「プレミアより筋肉量も幅もありますけど、歩きのやわさや顔つきは似てますね。距離は心配してないです。もちろん菊花賞は勝ってほしいですけど、なんせ無事に走ってくれたら。長い活躍をしてもらって、海外でも見てみたいですね」

“日高の夢”は膨らむばかりだ。まずは今秋。淀の長丁場で親子そろって大輪の菊を咲かせるか。北からも熱き視線が注がれる。

◆ワールドプレミア 2016年2月1日、ノーザンファーム(北海道安平町)生産。父ディープインパクト、母マンデラ。牡、黒鹿毛。馬主は大塚亮一氏。友道厩舎から18年にデビューして通算成績12戦4勝。重賞2勝は19年菊花賞と21年天皇賞・春。21年に引退して種牡馬入り。初年度産駒はJRAで14頭がデビューして5頭が勝ち上がり。全兄ワールドエースと半弟ヴェルトライゼンデもJRA重賞を制している。

2冠馬の父となったワールドプレミア(撮影・太田尚樹)
2冠馬の父となったワールドプレミア(撮影・太田尚樹)