太平洋から日本海へ。「直江津集合」を合い言葉に日本を横断するイベントに念願の初参加を果たした。
湘南の自転車乗りが16年前のある日の早朝、たったひとりでふらりと走り出し、神奈川・茅ケ崎の海岸にタッチした後、ペダルを漕ぎ続けて新潟・直江津までたどり着いた。当時、人気ブロガーでもあった彼の21時間半かけ393・7キロを走った仰天ライドは仲間内でも話題となり、その年の忘年会でやはり同じ年に渋峠を越えて直江津まで走った別の仲間から「直江津集合!」が高らかに宣言され、翌07年から毎年8月下旬にオフ会として開催されるようになった。
07年8月の第1回の開催概要によると基本ルールは2つ。「太平洋(湘南海岸)にタッチしてから日本海(直江津港)までの総距離350~400キロを通しで走る」、そして「たったひとりで黙々と走れ」。ただこれは条件ではなく、自宅から走り出してもいいし、自走であれば複数日(複数年)に刻んでも良いとなっている。仲間と走ってもいい。DNS、DNFは自由。もちろん全て自己責任で「勝手に来て、解散後は勝手に帰れ」。この基本線は現在でも変わっていない。
このオフ会に関しては少なからず関係があり、もちろん参加するつもりでコースの検討もしていたのだが、諸事情から都合がつかなかった。その後毎年「直江津集合」は開催されたにも関わらず参加はできず。コロナ禍で2年間自粛され、3年ぶりの開催が決定した今年、ようやくスタートリストに名を連ねることができた。
「8月27日の土曜日18時までに上越市船見公園に到着していること」。これを目指し、今回は四十数名が参加を表明。実際には三十数名が直江津へ向けて走り始めた。一斉に、ではない。1番スタートは木曜日の朝。会津若松を回っていくという。その日の夜と翌金曜日の朝には途中泊する人たちが出発。さらにその午後から深夜にかけては「通し」で走る人たちが続々と旅立った。江ノ島や茅ケ崎にタッチした人や、「刻み」ですでに途中まで走っているため新幹線ワープする人もいたが、大多数が東京、神奈川、埼玉の自宅からのスタートとなったようだ。
気になる天気だが、27日当日の直江津には午後から雨マーク。関東からの道中も26日から27日にかけて雨予想となっている場所が多かった。これで少し遠回りして行こうかという気持ちは萎え、最短距離の国道18号で碓氷峠を越え、上田で1泊し、そのまま長野、妙高と走るルートを選択した。神奈川県央の自宅から上田まで約200キロ、上田から直江津までは約100キロでトータル約300キロとなる。
忘れていた。その週の初めに自宅から30キロ先の茅ケ崎へ行き、最初のミッションを成すべく太平洋にタッチしていた。海水も摂ろうとしたが砂浜ではうまくいかなかったので、葉山港まで行ってゲット。すでにこの日だけで90キロ近くを走っていた。
集合前日の26日午前4時過ぎ、近所の公園で猫に見送られて走り出した。早朝なのでまだ車も少なく、順調に八王子などの市街地を通り抜ける。羽村付近からは過去に高崎や軽井沢へ向かうブルベで走ったルートをそのまま走った。今回はほぼ知っている道なのでキューシートは作らず、サイコンのナビだけにしたのだが、時間制限のあるブルベと違って緊張感がないのか曲がるポイントを見逃してばかり。気持ちよく直進すると、ナビに「方向転換して下さい」「オフコース」と怒られた。
お馴染みの秩父鉄道小前田駅、「ガリガリ君」の赤城乳業と過ぎ、藤岡から富岡へ向かう。いつもは寄ることができない製糸場の方へ回ってみると、何となく時代が昔に戻ったようなゆるやかな雰囲気に包まれ、いい気分。製糸場前の売店で売っていた「とけないアイス」が気になったが、スルーしてリスタート。でもやっぱり気になって国道に出る前にUターン。時間制限のないライドはこれができるからいい。パインのアイスゼリーバーをいただく。確かに食べ続けてもとけない。謳い文句のように「もっちり&ぷるん」という食感も良かった。ただ、体を冷やすのであれば「ガリガリ君」に軍配が上がることは間違いない。
国道254号を離れ県道に47号(一ノ宮妙義線)に入ると緩やかに上り始め、上信越道の高架を過ぎると勾配が一段ときつくなってくる。終盤は14%ほどあったか。結果的に今回の行程ではここが一番きつかった。律儀にブルベコースを走って来たが、次回このコースを通る時は高崎回りにしよう。ただ、妙義山を見ながら上らないとここへ来た気がしないのも事実。悩ましい。
道の駅みょうぎ付近のピークから一気に下って五科交差点でようやく国道18号(中山道)へ。峠の釜飯の「おぎのや」へはちょうどお昼時に滑り込んだ。ここで朝霞から来たというお仲間に出会う。「直江津」という言葉を出すだけで、初対面だが通じ合う不思議がいい。
天気予報では軽井沢付近で午後から雨となっていたが、確認するたびに降り始めの時間が後ろ倒しされており、碓氷峠へのカーブ1に差しかかった時には日差しが強く照りつけていた。暑さに参りかけていたが、幸運にもめがね橋を過ぎるころから曇り始め、登坂には絶好のコンディションとなった。勾配も最大が5%前後なので苦しむところもない。ヘタレ脚なので「スイスイ」とまではいかず、めがね橋の小休憩を含め1時間以上かかったが、気分よくカーブ184までの12キロを上りきった。
碓氷峠から軽井沢へ一気に下り、標高1030メートルの追分宿まで少し上り返した後はこの日の宿泊地・上田までは下るだけだ。この追分宿で中山道と北国街道に分かれる。この先はこのまま北国街道を行くのだが、オプションのルートとして上田まで続く浅間サンラインという選択肢もあり、何人かはここを走っている。4年前のブルベ(いってこい信濃追分400)で走った時、強烈なアップダウンという印象が残っていたので今回は回避したが、上田方面へは下り基調だったことを帰宅後に思い出した。国道の路面が結構荒れていたので、次回はサンラインを走ろか。
今年6月のブルベ(野辺山600)で苦しんだ上田から小諸までの上りを、この日は逆方向から気持ち良く下り、上田到着は午後4時半ごろ。上田城跡付近を少し散策してホテルにチェックインし翌日に備えた。この日の走行距離は213キロで獲得標高は1842メートル。結局、到着まで雨は一滴も落ちず、ラッキーとしか言いようがない1日だった。ビールもうまい(^o^)
今回の「直江津集合」は参加者の情報を共有するためLINEを使ったグループトークが実施された。そのため各参加者の出発時間や走行状況がある程度把握できた。そのLINEで夕方ごろから「高崎は雨」「伊勢崎も雨」「安中は霧」という悲痛な叫びが聞こえてきた。つらい雨のナイトランを続けている仲間たちには頭が下がる思いだ。事故なく無事にと祈り、眠りにつく。(この項続く)【石井政己】

























