こんなカラフルなペンシルタイプのベイプも売られています(写真はオンライン販売のサイトより)
こんなカラフルなペンシルタイプのベイプも売られています(写真はオンライン販売のサイトより)

受動喫煙対策から東京オリンピック(五輪)に向けて日本でも禁煙への取り組みが進められていますが、これを機に紙巻のタバコからアイコスなどの加熱式タバコに切り替えている人も多いと思います。ここロサンゼルス(LA)では、バーを含む飲食店、ビーチや公園、バス停などの公共の場、学校や公共施設の建物の20フィート(約6メートル)以内、空港の建物内などでの喫煙は禁止されており、ショッピングモールや野球場などでも所定の場所以外で吸うことはできません。電子タバコも同様で、全米で最も喫煙に対して厳しい街の一つとして知られています。そんなタバコに厳しいLAですが、近年は電子タバコの普及が目覚ましく、特に高校生を含む10代から20代の若者たちの間で急速に浸透していることに危機感が持たれていいます。そんな中、電子タバコによる健康被害が相次いで報告され、トランプ米大統領がついにフレーバー付きの電子タバコの販売を全米で禁止するよう求める発言をして注目を集めています。

オンラインには様々な種類の電子タバコが売られています(写真はオンライン販売のサイトより)
オンラインには様々な種類の電子タバコが売られています(写真はオンライン販売のサイトより)

アメリカでは日本で普及しているアイコスは販売されておらず、最もポピュラーなのが「VAPE(ベイプ)」と呼ばれる電子タバコです。タバコの葉を燃やさずに高熱で過熱することによってニコチンを含む蒸気を吸うことができる加熱式タバコと違い、ベイプはリキッドを使用してフレーバー付き蒸気を楽しむものです。そのため、タバコと言うよりもアロマ感覚で吸う人も多く、デザインも洗練されていておしゃれなものが多いので若者の間ではある種のカルチャーとして人気になっています。ニコチン入りとニコチンを含まないフレーバーだけのものがあり、リキッドを過熱すると白い蒸気が出るのは加熱式タバコと同じです。数あるベイプの中でも70%以上のシェア率を誇っているのが、スタイリッシュで手のひらに収まるコンパクトなデザインが人気のJUUL(ジュール)。カートリッジは使い捨てで手軽なこと、メンソールだけでなく、ミントやマンゴー、ウォーターメロン(スイカ)などフルーツ系フレーバーもあるのが特徴です。オンラインで買える他、タバコ専門店やガソリンスタンド、リカーストアーなどでも買うことができます。

タバコ専門店ではショーケースにたくさんの種類のベイプが並んでいます
タバコ専門店ではショーケースにたくさんの種類のベイプが並んでいます

ジュールの交換カートリッジは3%や5%などニコチンの量を選ぶことができます
ジュールの交換カートリッジは3%や5%などニコチンの量を選ぶことができます

タバコに多額の税金を課しているアメリカでは、場所によって値段は異なるもののLAではだいたい1箱8ドル~10ドル程度の値段で売られていますが、ベイプのスターターキッドは30~50ドル程度。交換カートリッジはジュールなら4つ入りで10ドルほどです。また、使い捨てタイプのベイプは10ドル以下でも買うことができる他、自分でリキッドをリフィールするタイプならより経済的で、使用量にもよりますがタバコよりもコスパに優れていることも魅力だと言われています。

一見するとキャンディーかガムのように見える若者受けしそうな交換カートリッジ
一見するとキャンディーかガムのように見える若者受けしそうな交換カートリッジ

タールが発生しないのでタバコより健康被害が少なく、煙が出ないので受動喫煙もなく安全だと思われてきた電子タバコですが、この1年で電子タバコを吸ったことによる肺疾患などで少なくとも6人が死亡していることが報告され、全米36州で380人以上が電子タバコとの関連が疑われる肺や呼吸器の疾患を患っていることも発表され、若年層への広がりに危機感が持たれています。米国疾病管理予防センター(CDC)によると、2017~18年の1年間で高校生の電子タバコの使用は78%も増え、4人に1人が使用しているとの調査結果を発表。健康被害への懸念が広がる中、サンフランシスコは今年6月に全米で初めて、電子タバコの販売を禁止する条例を可決。さらにセレブの街として知られるビバリーヒルズ市でも電子タバコを含む全てのタバコ商品の販売を禁止する条例が可決され、今後はLAでも販売禁止の動きが広がっていきそうです。

若者に安全だと思わせる広告を展開していると批判されているジュ―ルのポスターでは、ニコチンへの危険が書かれている一方で、”Make The Switch”とタバコからジュールへの乗り換えを促しています
若者に安全だと思わせる広告を展開していると批判されているジュ―ルのポスターでは、ニコチンへの危険が書かれている一方で、”Make The Switch”とタバコからジュールへの乗り換えを促しています

アメリカではタバコの購入は18歳からですが、これまで電子タバコは厳密にはタバコとは定義されていなかったために高校生でも買うことが可能でしたが、米食品医薬品局(FDA)が18歳未満への電子タバコの販売を違法と定める新法を執行したことを受けて現在は18歳未満への販売は禁止されています。また、一部の州では電子タバコを含む全てのタバコの販売年齢をアルコールと同様に21歳に引き上げる動きも見せており、この流れは今後全米に広がっていくと見られています。LAでは電子タバコもタバコと同様に危険だと認識されており、公共の場やレストラン、空港などでは使用できないので、LAを訪問する愛煙家の方は罰金を科せられないよう注意が必要です。

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」)