11月3日の米大統領選まで2週間を切りましたが、ここカリフォルニア州では期日前投票の回収箱を巡って、共和党が未承認の偽物を独自に設置する騒ぎが起きています。アメリカの選挙では日本とは違い、対面による投票以外にも不在者投票の一環として選挙前に投票用紙を入手して街中の公立図書館前などに設置された投票箱に投票用紙を投函できる他、郵便での投票も可能です。そして今、ロサンゼルス(LA)や南部オレンジ郡などで保守派の教会や銃販売店などの前に共和党が独自に設置した投票箱の存在が見つかっています。当然ながらカリフォルニア州政府は違法だとして撤去を命じていますが、共和党は投票者の便宜を図っているだけだと反発して拒否しています。コロナ禍での選挙となった今年は、多くの有権者が投票所に並ぶことや接触を避けるために期日前投票を利用すると言われている中、突如出現した偽投票箱に戸惑う声が出ています。

「Official」の文字が入った本物の投票箱
「Official」の文字が入った本物の投票箱

公式の投票箱は郵便ポストのように街のあちらこちらに設置されており、切手も不要で24時間好きな時に好きな場所でただ封筒を投函するだけなので多くの人が利用しています。地元メディアの報道によると、偽物と公式の投票箱を比較すると色や形が大きく異なっているので違いは一目瞭然だと言いますが、知らずに偽の投票箱に投函する人も多いようです。共和党側は、この投票箱に投函された投票用紙は回収してまとめて投票事務所に持っていくので違法ではないと説明していますが、そもそも偽投票箱に投函された投票用紙が本当に全て投票事務所に届けられるという確証はありません。選挙戦を有利にするために民主党に投票しているものだけ破棄することも可能で、何でもありなアメリカの選挙に驚きが隠せません。郵便投票に関しては多くの州で投函後に宅配サービスのように追跡が可能になっているため、確実に自分の一票がカウントされるよう面倒でも切手を貼って郵便投票をするという人も多いようです。

投票箱を利用して投票する人
投票箱を利用して投票する人

さらに、偽投票箱の設置に続いてLAでは投票箱が放火され、投函された一部投票用紙が焼失する騒動も起きています。地元メディアの報道によると何者かが火のついた新聞紙を投函し、中に入っていた100票前後の投票用紙が燃えたと伝えています。大統領選ではこうした投票妨害が年々深刻化しており、トランプ大統領を支持する過激グループらが投票所周辺で威圧的な態度で投票に来た人をおびえさせて投票させないようにするなど迷惑行為も急増しています。フロリダ州では投票所を警備する制服姿の警察官が、トランプ大統領の名前が書かれたマスクを着用して任務にあたっていたことが物議を醸していますが、こうした行為が各地で横行しているのが現状です。

シルベスター・スタローン主演の映画「ランボー」のようなマッチョなトランプ大統領の絵が描かれた旗を掲げてLAの高速道路を走りながら支持を訴える支援者
シルベスター・スタローン主演の映画「ランボー」のようなマッチョなトランプ大統領の絵が描かれた旗を掲げてLAの高速道路を走りながら支持を訴える支援者

アメリカでは大統領選の前月となる10月に選挙戦の行方に大きな影響を与える「オクトーバー・サプライズ」と呼ばれる出来事が起こるといわれています。今年の選挙でも、トランプ大統領夫妻が新型コロナウイルスに感染するなどホワイトハウス内でクラスターが起き、さらに民主党のバイデン候補も息子ハンター氏をめぐる疑惑の証拠メールがニューヨーク・ポスト紙でスクープされるサプライズも飛び出しています。トランプ大統領は新型コロナウイルスから完全復活してマッチョで強い大統領をアピールして支持者を熱狂させているだけに、バイデン候補にとっては選挙戦終盤で大きな痛手となっています。22日には最後の討論会も予定されており、泥沼化している選挙戦の行方から目が離せそうにありません。

多民族国家らしく投票所には日本語を含む複数の言語で書かれた標識があります
多民族国家らしく投票所には日本語を含む複数の言語で書かれた標識があります

(米ロサンゼルスから千歳香奈子。ニッカンスポーツ・コム「ラララ西海岸」、写真も)