「第36回G杯争奪全日本がま磯(グレ)選手権」(主催・(株)がまかつ)が4、5日の両日、大分・佐伯市の米水津の磯で全国10会場の予選を勝ち上がった36選手(シード、推薦含む)が参加して行われた。2日目の決勝戦は「横島の3番」で1時間40分戦い、江藤憲幸選手(43=米水津1)が8540グラムを釣り上げ、2位の谷慎也選手(27=米水津2)に6720グラム差で圧勝し、初優勝した。3位には藤井信行選手(38=徳山)が入った。【近江康輔】

 家族と共に一心不乱に15匹。バッカンには妻・美香さん、娘の七海ちゃん(小1)からの大漁祈願メッセージが書かれ、ライフジャケットに娘の妖怪ウォッチタオルをつけ、江藤選手が決勝戦で次々に竿を曲げた。まき餌を打つたび、手をふくたびに力をもらい「心強かったです」。

 決勝の舞台は30~35センチのグレが乱舞する横島の3番。北西風が吹きつける中、穂先を海中に入れ、潮受けゴムの角度だけを見て付け餌とコマセを同調させた。小型の活性が上がるとポイントをローテーションし、食いが浅いグレをきき合わせで掛け続け、最年少優勝を狙う谷選手を退けた。

 G杯を目指したきっかけは小学生のころ。テレビ番組「がまかつ日本列島釣り歩き」を見て、ファンになったことだった。「名竿・がま磯マーク2がスタジオに飾られていて、かっこいいなと思いました」。そんな少年の憧れがG杯全国大会出場という大きな目標に変わったのは25歳のころ。

 それ以来、毎年のように地方予選に挑むが、全国大会の壁は厚く予選落ちばかり。そんな中、子どものころから共に魚釣りにあけくれてきた兄の義紀さん(45)が他メーカーの全国大会を2010年に制覇。それからは江藤さんの弟さんという呼ばれ方をするようになり悔しかった。いつか自分もG杯で優勝したいという思いが強く込み上げた。

 そして13年、ようやくG杯全国大会(高知・鵜来島)出場を果たし8位になるまで躍進。今回、さらなるステップアップを目標に挑み、長年追い続けたG杯の頂点へ。表彰式で優勝者の名前が呼ばれた瞬間、江藤選手が両手を突き上げ拳を握りしめてガッツポーズ。あこがれ続けた優勝カップを手にすると「言葉にならないほどうれしい。この快挙はいつも快く競技の釣りに行かせてくれる妻や娘のおかげです。これでようやく兄と肩を並べることができました。いつか2人で決勝戦を戦えたら最高ですね」と目を輝かせた。家族の愛、兄弟の絆が、江藤選手をさらに強くする。

 ◆江藤憲幸(えとう・のりゆき)1974年(昭49)10月21日生まれ。北九州市在住。会社員。グレ釣り歴30年。ホームは長崎・平戸の磯と山口県下関市の蓋井島(ふたおいじま)。