釣った現地で釣果を食べてみよう-これが意外に難しい。千葉・内房のコンドミニアム「グランビュー岩井」なら、キッチン付きの部屋を借りられる。内房なら金谷「光進丸」でキラキラの金アジをおいしくいただきましょ。釣りをするのも、包丁を握るのもすべてが“初体験”の女の子が達人の指導を受けて、おいしいアジフライ、つくっちゃったぞ。

最近、遊漁で釣った釣果を売買して“こづかい稼ぎ”なんぞを勧める風潮もあるらしい。遊漁には遊漁の誇りがあるはずだ。だって「遊漁」という文字。堂々と遊んでいるのだから、ちゃんと責任をもって遊ばないとね。

そこで、その釣果を地元で食べられる手段はないか? 内房にありましたよ。詳細はのちほど書き込むとして、まずはおいしい魚を釣りに行こう。

東京湾フェリーの発着する金谷港といえば、関東最強の「金アジ」で知られている。内房の太陽は海ではなく山から顔を見せる。その来光に釣れたばかりのアジをすかすと魚体がキラキラとゴールドに輝く。黒いアジも存在するが、金谷近海のアジはイエローに金が溶け込んだ配色…ため息がでるほど美しい。

★金谷「光進丸」岡澤裕治親方 ようございますか、金谷港は自然豊かな鋸(のこぎり)山を背後に抱えてます。落葉樹の生い茂るこの山からは2本の川が注ぎこんでいて、ミネラルたっぷりの川水が海底に点在する根にブチ当たって、おいしいおいしいプランクトンがわいてきて、それをアジがバクリ…ここのアジは山に育てられて金ピカなんでございます。

裕治親方の名調子が金谷の町中に響き渡る。そりゃ、うまいわけだ。

そこで、釣り初体験の今井瑠々ちゃん(22)にサオを握ってもらった。「海のおじさん」こと木村尚(たかし)さん(62)が同行した。毎年10月に赤レンガ倉庫(横浜市)で実施して10万人を動員する「東京湾大感謝祭」で木村さんはプロジェクトリーダーで、瑠々ちゃんはメインステージで司会進行を担当していた。さらにステージ演出をまとめていた森山利也さん(54)がコーチ役で真横についた。森山さん、魚料理の達人で、築地場外では木、金曜だけオープンする人気居酒屋「JOJOバー」で腕を振るう料理人でもある。

それと、今まで何度か釣り経験があるものの、いまだに釣りを「楽しい」と思えたことのないフードコーディネーター古谷シホさん(38)も乗り込んだ。まず古谷さん、水深34メートルのポイントで、アジをヒットさせても海面から出たところでいつもバラしてしまう。アジの口は薄いガラス細工のようで、はかなくもろい。

森山さん アジは寸前まで泳がせて、海面まできたら、腕をのばして仕掛けをすくい上げて、放物線を描くようにして船内に入れる。そろー、と取り込むと空中で暴れて口を切ってバレる(逃げること)。アジに暴れさせるスキを与えないのがコツだ。

シホさん、アタリだけとって全然釣れなかったのが、見違えるように取り込めるようになった。しかも、針掛かりしたアジをきれいに放り投げて、テンポもいい。「キャー、これ面白い。こんなに釣りを満喫したのは初めてですぅ」と31匹をキャッチできた。

一方の瑠々ちゃんは大苦戦。どうやらタナ(魚の泳層)をつかめないでいた。そこにアドバイスが入った。

森山さん ビシ(寄せ餌のコマセを入れる金属製のカゴ)が着底したら軽く振ってコマセで煙幕をつくることを意識して、その中に2メートルの仕掛けを入れるイメージ。で、しばらくサオは動かずにアジに食わせるスキを与える。

瑠々ちゃんの持つサオの先がビュンビュン上下動した。しっかり合わせて、アジを釣り上げた。いい調子で、なんと計40匹の大漁だった。

釣果は十分。釣れたらすぐに南下して、岩井海岸の真ん中ぐらいにある「グランビュー岩井」に。コンドミニアムでホテルというよりもマンションだ。最上階の12階には展望浴場があって、温泉好きの木村さんは「湯船にどっぷり肩までつかってもきれいな海を一望できる。こりゃ、気持ちいい」とご満悦だった。

森山さんの厳しい指導のもと、瑠々ちゃんは生まれて初めての包丁。今の時期のアジは20センチ前後でやや小粒。しかし、ここに味がしっかりと詰まっている。瑠々ちゃん、なんとか骨に身を残しながらも3枚におろしたアジをフライにした。

アジが身切れしないように卵液に小麦粉を溶かして、アジには塩コショウをしっかり振ってくぐらせてパン粉をまぶした。衣をまとわせる工程を1つ減らした分だけ効率よく揚げることができた。「できると思ったけど、もっと包丁は練習しないと。料理は頭じゃなくて手で覚えないとダメですね」と瑠々ちゃんはようやくごはんづくりの入り口に立てたようだ。

そのほか酢締め、なめろう、ちょっと珍しい煮付けは森山さんが手際よく仕上げてくれた。釣ったアジを地元でおいしくいただく。こんなプラン、どうですか?【寺沢卓】

▼船 金谷「光進丸」【電話】0439・69・2232。LT(ライトタックル)アジ乗合船は出船午前7時、沖あがり午後1時、エサ&コマセ&氷付き8500円。

▼コンドミニアム「グランビュー岩井」【電話】0470・57・3311。素泊まりなら1泊1人3500円~。2食付きプランもあり。スタッフの手作りが基本の朝食バイキング(午前7~9時)は別途500円。