暦の上では冬にさしかかって、各湖では「寒ベラ」のシーズンを迎えた。「ヘラブナ初心者は、基本の底釣りをしっかり覚えられるこの時季に勉強した方がいい」。日刊釣りペンクラブでヘラ歴50年の大ベテラン、関川康夫会員(67)はこう力説する。正確に底を取って長いサオが扱えるようになることが、獲物を釣り上げるための基本になる。埼玉県寄居町の円良田(つぶらた)湖で早速、実釣を兼ねて解説してもらった。

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関川師匠、釣り場の仕切網中に着くとサオではなく、まずは水深計を取り出した。「水温が下がって活性が落ちるこの時季、ヘラは底に落ちる。エサを底にはわせることが、本命を獲得するための基本。第1段階として、深さをつかんでおく」と説明してくれた。

計測は6・4メートル。ここから、どれだけの長さのサオを使うか決める。最初は19尺(約5・7メートル)。タナ取りゴムを針に掛けて、着底するか試した。着底しなかったので、21尺(約6・3メートル)にした。

「この出発点で間違えると、釣果に響く。適当にやると1日、魚の遊泳層がつかめないタナボケのまま終わっちまう。時間がかかってもいいから、丁寧に底取りをやるこった」。

べらんめえ調の師匠、深さが分かれば仕掛けを準備する。まず0・6号のハリスを取り出す。見れば、箱の中に長さ80センチで20本ほど入っている。必要に応じてハサミで短く切って調節。針は7号。食いが渋ければ6号、5号と小さくする。ウキを付け、バランスを確認する。次いで板オモリを爪で押さえながら巻く。

水中に仕掛けを振り込み、上からオレンジ、緑、黄色、緑、オレンジ、緑、黄色、緑、オレンジと色が塗り分けられているヘラウキの目盛りをチェックする。エサの付いた状態で上から3つ目の黄色が湖面スレスレになるよう設定する。準備時に太陽が正面から照り付けていたため、少し左にズラして振り込み、一度サオを引いて水中に潜らせる。再度、3目盛りの黄色で止まるかチェックした。

続いてエサの両ダンゴを作る。「ダンゴの底釣り夏」「同冬」「バラケマッハ」各50グラムに、水60~70グラムを混ぜる。必要以上に粘ると水中にバラけづらくなるため、3分の1ぐらいずつに分けて練る。パチンコ玉程度の直径11ミリに丸め、針は隠して付ける。

準備に要すること約40分、やっとエサを付けて実釣開始だ。「エサはウキから直径30センチに打ち込めるように」(師匠)。仕掛けを振り込む時、利き手の右手でサオの柄を握る。左手でハリスをつかみ、左肩の横に出す。サオの弾力を利用してハリスを放し、利き腕のヒジの曲げ伸ばしで飛距離を調節して、打ち込むポイントを一定にする。

エサが底まで落ち、湖面にウキが立つ。上から3つ目の黄色が湖面スレスレに来た。これより下の色が浮いて出ればエサが溶けてしまったり、粘り気が足らない証拠。再度付けて投入する。この繰り返しだ。

かすかだがウキの黄色が瞬時にスッと沈んだ。師匠、右手首を返してサオを垂直に立てると、満月に絞り込まれた。ヘラの口を湖面に出して弱らせる。左手で持ったタモには30センチ級のヘラが取り込まれた。

基本さえ正確に覚えれば、釣果に結び付く。「この時季なら、タナを絞って作戦が立てられる。まさにヘラの入門編。経験者に教えてもらいながら、初心者も上達するチャンス」と師匠は話してくれた。【赤塚辰浩】

◆円良田湖(つぶらたこ) 埼玉県寄居町と美里町にまたがる、かんがい用の人造湖。寄居町観光協会が完全管理している。1942年(昭17)に工事に着手し、55年完成。現在は農業用水として利用されている。周囲4・3キロ、湖の面積は約11万平方メートル。鐘撞堂山(かねつきどうやま)と大槻峠に囲まれた谷間にあり、新緑と紅葉の季節はハイキングを楽しむ人が多い。最大深度18メートルで、地底には木の根やガレキが多く、カケアガリが多い。

▼釣り宿 円良田湖管理事務所【電話】048・581・8511。入漁料800円、放流バッジがあれば600円、現場売り1500円。ボート2800円(放流バッジありなら2600円)。ワカサギ釣りのボートは1人乗り2600円、2人乗り3500円。桟橋料金2100円(入漁料込み)、午前11時からの半日券1100円、女性と高校生以下800円。営業時間は午前6時から午後4時、ボートは午前6時30分から(いずれも3月末日まで)。