男性の尿漏れは、ある程度の年齢以上になると誰もが経験する症状の1つです。その原因としては、ぼうこうの柔軟性がなくなって、尿をぼうこうにためておけなくなってしまい、その尿が尿道を伝って少しずつ体の外に出てきてしまうことが挙げられます。また、尿道付近の陰茎の付け根の筋肉を締めることによって、男性は尿意を我慢したり排尿をコントロールしていますが、この筋肉の働きが加齢によって衰退、減少してしまい、尿道をきちんと締めたり緩めたりすることができなくなって、尿が漏れてしまうことです。

 さらに男性の尿漏れに多い原因として注目されているのが、排尿した後に尿道に残ってしまった尿が少しずつ漏れて、ズボンにまで染み出すことです。

 尿漏れにはさまざまな悩みがついて回り、男性のプライドを傷つけるようなこともたびたび起こってしまう場合があります。具体的な例としては、男性が意図していないのに尿が漏れてしまい、パンツやズボンに染みをつくって、周囲に尿漏れがばれてしまうケースです。

 男性の場合は、女性に比べて尿道が極めて長いため、おしっこをした後、尿道に尿が残っていることで、パンツがぬれてしまうことは前述のとおりです。排尿後にペニスを十分に振るだけでなく、睾丸(こうがん)と肛門の間(会陰=えいんと呼ぶ)から、ペニスの先に向かって押し、残っている尿をすべて出すことです。

 男性の尿漏れは高齢者の男性だけに起こる症状ではなく、早い人では20代前半から尿漏れの症状を示す人もいます。特に、尿を完全に出し切る前に下着、ズボンを上げてしまうと、尿漏れを起こす原因となります。私が勧める排尿法は、洋式トイレに「座って」、尿が全部出尽くすまで待つ。立ったまま用を足す時のような、下着やズボンの圧迫もありません。

 15年8月に20~60歳代の男性500人を対象に行った「トイレの実態に関する意識調査」の結果、約6割の男性が自宅のトイレで座って小用をしていることがわかりました。座って小用をする理由で最も多かったのは「立ってすると尿ハネでトイレが汚れるため」という回答。約8割を占め、既婚男性の5人に1人が「奥さんに座るよう促されたため」と回答しました。私が勧める「男性もきちんと座って小便!」は、尿漏れ対策だけでなく、家庭内の平和にもつながることと思います。

 ◆森田豊(もりた・ゆたか)1963年(昭38)6月18日、東京都生まれ。秋田大医学部、東大大学院医学系研究科修了。米ハーバード大専任講師を歴任。現役医師として活躍すると同時に、テレビではコメンテーターのほか、「ドクターX~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系)など人気番組の医療監修も数多く務める。著書は「今すぐ『それ』をやめなさい!」(すばる舎)「ダイエットはオーダーメイドしなさい!」(幻冬舎)「ねぎを首に巻くと風邪が治るか?」(角川SSC新書)など。気分転換は週2回のヨガ。