いよいよ始まる東京五輪・パラリンピックのボランティア募集-。7月下旬には応募要項が発表される予定で、9月からは応募登録がスタートする。過去大会にならい発表された条件案が厳しすぎるという意見もあるが、大会に参加できるボランティアの魅力は格別。18歳以上という条件以外は、老若男女、障害の有無を問わずに参加できるボランティア。経験者や希望者に、魅力を聞いた。


17年9月、東京都が新たに製作した3種類のボランティア用ユニホーム
17年9月、東京都が新たに製作した3種類のボランティア用ユニホーム

 女子高生たちも、東京大会のボランティアに意欲をみせる。お茶の水女子大付高の「アフガン☆ボランティア部」は今秋の文化祭に向けて「東京大会」の展示をしようと準備をすすめている。「あまり知られていないパラリンピック競技を紹介するのもいいかなと思っています」と、芳沢円優(まゆう)さんは話した。

 お茶の水女子大は02年からアフガニスタンの女子教育支援を始め、高校でも10年以上の活動実績がある。1学年120人ながら、部員42人と同校最大の部活。文科省指定の「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」としてグローバル・リーダー育成を目指す同校だから、生徒たちの社会貢献への思いは強い。「ボランティアを通じ、社会に貢献する喜びは大きいです」と、ジェンキンス紗南(しゃな)さんは話した。

 部の活動は不定期。部員たちがアイデアを出し、自発的に動く。それが「ボランティア」だ。さらに「知ること」「伝えること」にも重点を置いている。浅尾朱理(しゅり)さんは「知らなければ見えない。まず知ること。そして、伝えることが大切」という

 東京大会の応募条件は18歳以上。2年後に大学生として資格を得る2年生の3人はボランティアでの参加に意欲をみせる。「何かの形で参加したい」と浅尾さんがいえば、ジェンキンスさんは「海外の方の通訳など、語学を生かしたい」。芳沢さんも「競技以外の場所で貢献したい」。みな、まぶしい笑顔をみせた。


ボランティア部の活動を紹介する、左から吉沢円優さん、ジェンキンス紗南さん、浅尾朱理さん(撮影・滝沢徹郎)
ボランティア部の活動を紹介する、左から吉沢円優さん、ジェンキンス紗南さん、浅尾朱理さん(撮影・滝沢徹郎)

■ユニホーム・飲食→提供 交通費・宿泊費→自己負担


 大会ボランティア募集に向けて、東京五輪・パラリンピック組織委員会も準備を急いでいる。組織委募集の「大会ボランティア」は約8万人(東京都が募集する都市ボランティアは約3万人)。3月の理事会で過去にならって応募条件案を決め、5月21、28日のボランティア検討委員会でも議論を重ねた。

 活動期間は10日間以上。ユニホーム、活動中の飲食は提供されるが、交通費、宿泊費は自己負担となる。「10日は長い」「チーム作りに10日は必要」と日程に関して意見が噴出。「都内交通費を支給しては」「ホテルの紹介をしては」という声もあった。これらが、7月下旬発表予定の募集要項に盛り込まれる可能性もある。

 もっとも、条件のハードルが高くても、それ以上の魅力にはまる人は多い。組織委も多くの人が応募できるように、あえて年齢の上限を設けない方針。「参加したい人全員が参加できる」大会を目指して、ボランティアの募集が始まる。


◇ボランティア応募の主な条件(案)

 1.2002年4月1日以降生まれの方

 2.組織委員会指定のすべての研修に参加できる方

 3.日本国籍、または在留資格を有する方

 4.合計10日以上活動できる方

 5.大会成功に向けて、役割をまっとうできる方

 6.互いに思いやる心を持ちチームとして活動したい方


障がいを持ちながら東京五輪にボランティアとして参加することを目指す小林俊介さん
障がいを持ちながら東京五輪にボランティアとして参加することを目指す小林俊介さん

■日本でもできるはず。やりたい

 「する、見る、支える。そのすべてでスポーツと関わりたい」。小林俊介さん(26)は話す。生まれつきの脊髄性筋萎縮症、四肢の筋力が低下する10万人に1人の病気で、中学生の時に車いすになった。「スポーツ好きだけど、重度の障害で『見る』だけ」だったが、昨年ボランティアに目覚めた。「海外では多くの障がい者がやっている。日本でもできるはず。やりたいと思った」という。

 今年1月、バスケットボール女子日本リーグでボランティアとしてDJ補佐をした。身体は不自由だが、話すのは得意。「障がい者でも、作業によってはできる。『支える』ことができてうれしい」と話す。「まだまだ日本では障害に偏見がある。世界に対して恥ずかしい。スタッフとして健常者と一緒に働くことも差別をなくす手段なのかなと思う」と言い切った。

 リオ五輪でボッチャを見て、スポーツを『する』こともできた。今は山梨県ボッチャ協会の会長兼選手としても多忙な日々を送る。普及のために、26日には山梨県初のボッチャ大会を成功させた。「東京オリンピックにボランティアで参加し、東京パラリンピックは選手として出たい」と夢は広がる。「障がい者だからできない、ではなく、障がい者でもできる。今は毎日がすごく楽しい」。精力的にスポーツに関わる小林さんは幸せそうに言った。


1964年東京五輪のボランティアバッチを手にする白井正一さん
1964年東京五輪のボランティアバッチを手にする白井正一さん

■頼りにされることはうれしい

 「前に1回やっているからね。もういいかな、とも思ってますよ」。白井正一さん(75)は「TOKYO1964 GOOD-WILL GUIDE」と書かれた64年東京五輪の通訳ボランティアバッジを手に笑った。「20年は真夏。体力的には難しいかな」と言いながらも「頼りにされることは、うれしい」と、その魅力を口にした。

 英語は映画で覚えた。国学院大ではESS(英会話研究会)に入った。東京五輪では通訳として活躍。バッジは、その時に配られたものだ。卒業後は外資系メーカーに入社し、世界中を飛び回った。現地の人に世話になった。「今度は自分が海外の人を助けたい」。会社を早期退職し、ボランティア活動に力を入れた。

 02年日韓W杯では、横浜市のボランティアとして活躍した。その時のメンバーで「よこはま2002ボランティアの会」を結成。現在の会員数は223人だ。世界トライアスロンシリーズなど横浜で行われるスポーツイベント、外国船入港時の案内通訳など多忙な日々を送っている。「嫌な思いをすることもあります。でも、楽しい思いの方がはるかに多い」。白井さんは「2度目」の東京五輪を楽しみに話した。


◇2020年東京大会ボランティアへの道

18年7月下旬 募集要項公表(予定)

 同9月中旬 応募登録スタート

19年2月~  面接・説明会参加

 同10月~  共通研修参加

20年4月~  役割別、リーダー研修参加

 同5月~  ユニホーム等受け取り

 同6月~  会場別研修参加

 同7月24日 東京五輪開幕

 同8月25日 東京パラリンピック開幕