東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の武藤敏郎事務総長(76)が26日、予定通り7月24日開幕の大会を開催する考えを強調した。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、25日に国際オリンピック委員会(IOC)の委員が「5月下旬が開催判断のリミット」と発言したことを完全に否定。3月26日からの聖火リレー規模縮小を視野に入れながらも「あくまで大会実施に向けて準備していく」と強い口調で話した。

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当面の対応などを発表していた武藤総長の口調が、強くなった。「大会は予定通り」。前日にはIOCの古参のパウンド委員(カナダ)が「開催判断のリミットは5月下旬」と発言したことが報じられたが、「確認したところ、IOCの考えではない」と断言。「タイムリミットの話も、していない」と完全否定した。

感染の拡大で、スポーツ界も大きな打撃を受けている。五輪関係でも予選大会中止や会場変更、組織委員会主催のテスト大会も規模縮小を強いられている。国民の関心が、東京五輪に向けられるのも当然だ。それでも、武藤総長は実施に向けて強気。「感染状況の予想は難しいが、安心安全な大会開催のために対応を考えていく」と話した。

五輪の主催者は、あくまでIOC。組織委はIOCから準備、運営を任されているだけで、延期や中止を決める権利はない。マラソンの札幌変更のように、突然IOCが「東京はダメ」というかもしれない。「東京で大丈夫」と思わせるために、過度な危機感をあおらず安全安心な開催をアピールしていくしかない。

聖火リレーは、来週中にも感染拡大を防ぐために基本方針を出すが「各自治体で状況は違うので、一律の基準は設けない」。多くの人が集まる出発式、到着式などのセレモニーを縮小するなどの可能性はあるものの「7月まで続くので」と事態の収束を願い「中止はまったく考えていない」と強い思いで言い切った。

3月4日には、IOC理事会が行われる。組織委はここでプレゼンテーションをするが、理事たちの関心が新型コロナウイルスの感染拡大に向くのは間違いない。大会の夏までには収束するという見方もある中、組織委は感染拡大の驚異を横目に安全安心な大会開催に向けて準備を進めるしかない。

○…政府の指針、安倍首相の大規模イベントの中止要請を受け、大会組織委員会が「イベント実施にあたっての対処方針」を発表した。「手洗い、咳エチケットの徹底」「消毒液の設置」「マスクは各自で用意」などで、感染の動向を見守りつつ見直すとされている。28日から予定されていたボッチャのテストイベントは29日からの2日間に短縮。選手を参加させず、組織委職員と連盟関係者ら約130人が参加して進行などをテストする。