S級S班で臨んだ桑原大志の2018年はもうすぐ終わる
S級S班で臨んだ桑原大志の2018年はもうすぐ終わる

昨年の桑原大志(42=山口)は、デビュー20年目にして初めてKEIRINグランプリ(GP)出場を果たした。本番は落車で終わってしまったが、それでも最良の1年を過ごした。

「最後が落車という結果だったけど、最高の準備をして出られたし、悔いはありませんでした。僕は結果よりもレースに臨むまでのプロセスの方が大事なんです」。

プロ意識が高い桑原にとって、初のS級S班で迎えた今年は過酷なものだった。GP落車の傷も癒えないまま臨んだ初戦は1月の大宮G3。苦しい1年を象徴するような始まりとなった。

清水裕友の番手を回った2予で桐山敬太郎に競り込まれてしまう。1度は踏み遅れて3番手に下がったものの、直線で内から追い上げ、桐山を激しく外へと押し上げた。結果は「失格」だった。

「僕は、SS班の脚力ではない。それは自分でも良く分かっている」。

高みに立った人間は、周囲から執拗(しつよう)にマークされ、位置を狙われることもある。それでも、どうしても譲れない場面が出てくる。桑原にとって同県の清水の番手は、絶対に譲れない位置だった。

「僕の調子が悪くても、SS班ということで我慢して3番手を回ってくれる人もいっぱいいた。そういう人たちに来年はお返ししていきたいですね」。

思うように戦えない1年だったが、後輩の清水裕友がGP出場のバトンをつないでくれたことで、少しだけ留飲を下げた。

「苦しい思いをした分だけ、人の痛みも分かるようになった。人間的には少し成長できたかもしれませんね。来年の春までには完調に戻したいです」。

最終戦はG3佐世保(21~24日)。コツコツ型の桑原にとって、この2年はまるでジェットコースターのようだったろう。もがき苦しんだ18年はもうすぐ終わる。

【松井律】