清水裕友(25=山口)が初の「夜王」の座に就いた。

松浦悠士の先行に乗り、まくってきた新田祐大に切り替えての差し切り勝ち。ラインの絆の強さを見せつけ、下半期も中四国勢が競輪界を引っ張ることを印象づけた。清水は今年2月の全日本選抜に次ぎビッグ2勝目。

やっぱり、9車でファンがいてこそだ。清水が競輪本来の楽しさを再確認させてくれた。大外枠からスタートを取り、迎え入れた松浦がいったん下げた中団から打鐘3角で発進。清水はまくってきた新田にスイッチしてゴール前でキッチリ差し切った。

3番手岩津が失格したため笑顔はなかったが「宮杯(高松宮記念杯)を終わって“脇本さんや新田さんには勝てん”と思ったので、うれしい。9車だと五輪選手にも先着できるから楽しい」と、3日間全てで東京五輪代表を破った上での優勝を素直に喜んだ。

盟友・松浦が言う。「今までで一番いい先行ができたが、あっさり(新田に)まくられた。それを(清水)裕友が抜いてくれて良かった。(前場所)小松島で裕友が前で頑張ってくれたので、終わった後に“サマナイは俺が前で”と言った」。

これまでは番手を回った方が勝ってきたが「お互い今は、前を回った方が押し切ることを意識して練習している」と続けた。2人は既に新たなステージを目指して戦いを進めている。

ビッグレースでは今回からようやく地元限定(最大1000人)でファンが入場できるようになった。数こそ少ないが、連日の熱い声援が選手を奮い立たせたことは間違いない。

清水もこの日訪れた965人の向こうに大勢のファンの姿を見ていた。「下半期最初に優勝できたし、今後はGPに向けて少しでもレベルアップしたい」。清水はこれからも、ファンを身近に感じて走り続ける。【栗田文人】

◆清水裕友(しみず・ひろと)1994年(平6)11月9日、山口県防府市生まれ。誠英高卒。高校で自転車競技を始め、10年高校総体ケイリン優勝、12年アジアジュニア自転車競技大会チームスプリント優勝。競輪学校(現養成所)105期生として14年7月に武雄でデビュー(1、1、1着)。今年2月の全日本選抜でG1初優勝。通算454戦165勝。通算獲得賞金は2億7107万6000円。166センチ、78キロ。血液型A。