被災から10年。復興熊本で14年ぶりのG1開催となった全日本選抜は、12Rで決勝が行われ、脇本雄太(36=福井)が番手まくりで大会連覇を果たした。2着に古性優作が流れ込み、直線伸びた山口拳矢が3着に入った。脇本は優勝賞金4490万円(副賞含む)を獲得し、KEIRINグランプリ2026(いわき平)への出場決定第1号となった。

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昨年4人をKEIRINグランプリ(GP)に送り込んだ近畿王国の兵力は、年が変わっても盤石だ。

古性がSを取り、郡司の戦闘力を削ると、寺崎が残り2周から突っ張り、犬伏が無力化された。大将の脇本が2角で発進した時点で完全に決着はついた。

「万全じゃない中で、近畿のみんなに助けられた優勝。大好きな熊本の熱い声援に応えられてうれしい。決勝はスタールビー賞(SR賞)の失敗もあった上でのレースだった。赤板過ぎに寺崎の気持ちを察知しました」。

今年は寺崎もSS班。安易な発進役では周囲が納得しない。しかし、SR賞で郡司にやられた反省が、寺崎の気持ちをたぎらせた。

昨年“グランプリスラム”を決めた当大会を連覇。今年も脇本が真っ先にGP出場権を手に入れた。

左肘の具合は決して良くない。再手術が必要となる可能性もある。それを正直に伝えても、あまりの強さに反感を持つファンの声は多い。「肘の状態は10%。戦法の幅は狭くなっているし、やれることが決まっている。逆にそれで気持ちが吹っ切れている部分はあります」。この優勝が持つ意味は大きい。今年はGPやG1の出場権争いを気にせず、治療と競走のバランスを取っていけるからだ。

14年ぶりにG1が開催された熊本は、最終日に1万人を超える来場があった。熊本地震で1度は廃止まで囁かれた競輪場。新たなドラマの初代主演は、この地をこよなく愛する男だった。【松井律】