メッシ
メッシ

ついに来たか、というインパクトがありました。バルセロナFWメッシ退団のニュースです。バルセロナは欧州チャンピオンズリーグ(CL)での歴史的な敗戦を受け、過渡期にあることが明確に出てしまった感はありました。

年齢で区切るものではありませんが、バイエルン―バルセロナのCL準決勝スターティングメンバーでGKをのぞくフィールドプレイヤーの平均年齢は27.5歳で、一方のバルセロナは29.8歳。バイエルンは19歳のFWアルフォンソ・ディビスが一番若く、フィールドプレーヤーではFWレバンドフスキが最年長で32歳。一方バルセロナはDFラングレの25歳が一番若く、FWスアレス、メッシ、DFピケ、MFビダルの4名が33歳で一番上。結果論ではありますが、ピークを過ぎている選手が多かったととらえられかねません。年齢だけでの判断はできませんが、レアル・マドリードでも昔のトラウマがありました。CL前身のチャンピオンズカップ5連覇を経験するなど、大スターであったFWアルフレッド・ディ・ステファノは40歳までプレーしました。しかし晩年は明らかにパフォーマンスが落ちていたのは誰もが感じていたところ。とはいえ功労者であったために切るに切れなかった過去があります。その経験から、現在では30歳以上の選手は1年契約を条件としているとあります。レアルのフロレンティーノ・ペレス会長はスポーツビジネスにおいては「現場の感情が時にビジネスを邪魔してしまう事がある」という言葉を口にしておられましたが、まさにそれを目の当たりにしているのかもしれません。

しかしながら、幼少期からクラブで育った大スター選手の取り扱いです。簡単にいきません。めったに起こらないことが起こっているという、なんとも言えない感情もわき上がります。メディアにも取り上げられているように、移籍金は800億円超という大金です。これがどのぐらい大きなインパクトをもたらすのかという部分のお話を、クラブの経営状況という側面から見てみたいと思います。

バルセロナが昨年9月に発表した財務状況からすると、2018−19シーズンの収入は約9億9000万ユーロ(約1180億円)で、支出は約9億7300万ユーロですから、税引後利益としてわずか500万ユーロ(約6億3000万円)ということでした。コロナウイルスの影響もあり、ここから約30%の収入が減ったとされていますから、これが本当なのであれば、今シーズンの収入は800億円前後であることが予測されます。問題は支出で、人件費が総支出の半分以上を占めていることもあり、支出はあまり変わっておりません。つまり、400億円前後のマイナス計上が予測されます。

トップ選手の給与カット施策も働いており、これが約100億円超と言われてますが、それでもまだ300億円ほどのマイナスが出てしまう、という財務状況になります。

同時に近年の他チームによるバルセロナの若手選手の青田買いに拍車がかかっており、資産流失に手が打てていない状況でもあります。本来であれば、よりこの部分に予算を割き、資産を守ることをしていかなければならないのではと予測できますが、そうはいかないのが現状と想像できます。

そんな中、メッシの800億円とも言われる違約金が表に出たわけなのですが、まさにこれはクラブの1シーズンの売り上げに等しい数字です。しかし、その価値は来年の夏になると0円になってしまいますから、最低でも来年1月のマーケットがラストチャンスになってきます。だとするとこの夏になんとか対処しなくてはならないという見方も出て来てもおかしくありません。一部メディアで既に報じられてはおりますが、ある程度の現金に若手選手2、3名を加えた取引も十分に考えられると感じます。

バルセロナFWメッシ
バルセロナFWメッシ

大きくヨーロッパフットボールの歴史が動こうとしているわけですが、最大の懸念点はリーガそのものの価値が下がることです。2大スターであるメッシ、そしてC・ロナウドのリーガ離脱は放映権の価値を落としかねなく、当然ですがスポンサー離れということにもなりかねません。選手ありきでビジネスを行いすぎることによるリスクは、チームだけでなくリーグの運営にも大きな影響を及ぼしかねません。選手や結果に左右されないビジネスモデルが求められるというスポーツビジネスの難題が、改めて浮き彫りになるような気がします。【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)