新時代を迎えたJリーグに新たな才能が現れた。
横浜F・マリノスMF三井寺眞(みいでら・しん)。青森県出身。この春にサッカー留学していた仙台の中学を卒業したばかり。16歳4カ月5日で秋春制にシーズン移行したJ1開幕戦、鹿島アントラーズ戦に先発でデビューした。
前半7分に右からの折り返しを左足で押し込み、開幕戦での最年少ゴールを記録。Jリーグ史上でも2004年の森本貴幸(東京V)の15歳11カ月28日に次ぐ史上2番目の年少ゴールとなった。
注目すべき点は得点だけにとどまらず、チーム2点目、3点目もゴールの2つ前のプレーでともに関与していたこと。巧みなボールタッチ、スピードに乗ったドリブル、わずかなスペースも突ける正確なパス。利き足が左と大勢とは異なる視点を持てることも、ピッチに変化をもたらしている。
開幕戦に抜てきしたコリカ監督は「素晴らしいパフォーマンスだった。ただ私にとって年齢は関係ない。いいプレーをする選手を使ったまで」。今後を見据え、努めて冷静に話した。
16歳でデビューとなれば、つい短絡的に「怪物」と表現したくなるところだが、素顔の三井寺のイメージにはそぐわない。そこは初々しい高校1年生(通信制高校に在学中)の姿が見て取れる。
試合後に多くのメディアに囲まれた中、照れくさそうに言葉をつむいでいた。
「ゴールも取れたんですけど、やっぱり(3-4と)勝てなかったので、自分の中では悔しい気持ちが大きいかなと思います」
「昨日は前泊ですごく緊張していたんですけど、色んな先輩が話しかけてくれて、今日はノビノビとプレーできたかなと思います」
「(得点シーンは)近藤選手の個人技がすべてだったかなと思うので、あとは自分はクロスに合わせるだけだったかなと思います」
「試合前におまえが決めそうだなみたいに言われてて、いいところに転がってきたのでうれしかったです」
得点以上に会場をわかせたのが、前半18分だった。後方からのロングパスに対し、鹿島DF植田直通に体を寄せられた中、左足のアウトサイドでワンタッチ。ボールを巧みに浮かせることでかわし、ボールをキープ。そこからMF天野純へパスをつなぎ、得点を演出した。
そこについては「いや、なんかたまたま。まぁ(植田が)来てたので、後ろのスペースを突こうかなってトラップしたら、なんかいい感じでアウトサイドに当たって。(スタジアムが沸いて)すごく気持ちよかったです」
そして視察に来ていた森保監督が「すごかったって褒めていましたけど、いかがですか?」と水を向けられると、「うれしいです」とひと言。
矢継ぎ早に質問が飛ぶ中、1つ1つにマイペースながら丁寧に対応した。その人柄は、大人びたような“すれた”ところが一切なく、むしろ奥ゆかしい。家族やサッカーを通じて周りの指導者たちから大事に育てられてきたことがよく分かる。
4月2日にプロ契約を結び、翌3日に会見を開いた席で「初任給の使い道は?」と問われると、「ここまでサポートしてもらった家族に何かプレゼントしたい」と答えた。「では何を買いたいか?」と聞かれたら、しばらく考え込んだ後に「まだ分からないです」。その時も少し恥ずかしそうな表情で答える姿が印象的だった。
ピュアな心でサッカーを楽しむうちに、ここまで一気に階段を駆け上がったのだろう。
「活躍し続けている選手が上に行けると思うので、自分はまだ今日1試合しか出ていないので、これからやっぱりチャンスをつかみ続けることを自分のモットーにしていきたいかなと思います」
その言葉も地に足が着いたものだった。
あのヤマルは15歳9カ月にして名門バルセロナでプロデビューしている。ただ世界的に見ても三井寺の16歳4カ月もかなり早い。
かつて中学卒業してすぐデビューした森本貴幸は「怪物」と呼ばれた。また、長崎・国見高で大活躍した平山相太も「怪物」と称された。
そもそも「怪物」とは、実在しないようなバケモノのことを指す。三井寺もまた傑物には間違いないが、現実離れした型破り感は重ならない。自分を大きく見せることなく、常に謙虚。それでいて内に秘めた情熱や野心を持つ。
誰からも愛されるフットボーラーへ。その資質を持つ三井寺の今後の活躍が楽しみでならない。【佐藤隆志】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「サカバカ日誌」)